原作設定(補完)
□その40
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もちろん救急車は来なかったが、声を聞いて近くにいた隊士が来てくれて、連絡を受けた近藤もやってきた。
真っ赤な顔で布団に寝かされている土方を見て笑う。
「あー、やっぱりなぁ」
「やっぱり?」
「具合悪そうだったからな。でも言っても"大丈夫だ"ってきかないし、いつも倒れるまで我慢しちまうんだ」
きっと近藤の前では特に我慢するし、他の隊士たちに弱いところも見せたがらないだろう。
すごく土方らしくて銀時も小さい溜め息をついて笑った。
そんな銀時に近藤が尋ねる。
「トシは寝ちまう前に何か言ってたか?」
「………何か、って?」
「それがな、言わずに我慢していることを言ったり、甘えたくなったりするんだよ」
「……へえ……」
「ま、何か言われたらそれがトシの本音だからな」
近藤は嬉しそうにそう言って部屋を出て行った。
銀時と付き合っていることを近藤に内緒にできない土方だったので、報告したときにはかなり驚かれたらしい。
だが土方が近藤に甘いように、近藤も土方に甘い。
銀時に副長(代理)を頼んだのも、真選組に入らないかと誘ったことも土方のだめだったんじゃないか、と思える。
2人がラブラブでちょっとムカついた。
寝ている土方の隣に座る。
首筋に手を当てるとだいぶ熱いが、山崎には薬を飲ませたのでじきに下がると言われた。
「……本音、ねぇ」
いつだって素っ気無くて甘えてくれることなんて一切合財ちっともないけれど、あんな風に思っていてくれていたなんて。
思わず笑みがこぼれてしまう銀時だった。
翌日、土方の熱はちゃんと下がっていつもどおりの凛々しい土方に戻っていた。
「まだいたのか」
銀時の顔を見てそう言った顔は迷惑そうで、本当に素っ気無くて泣けてくる……今までなら。
「多串くんが寝込んじゃったからお手伝いしてたんですぅ」
「……そうかよ。だったらもう大丈夫だ」
だが、だからもう帰れ、と言わんばかりの態度に銀時も意地悪をしたくなった。
「俺さ、やっぱりこのまま真選組に入れてもらおうかな」
「…………」
「だって給料も良いしぃ、みんな楽しいしぃ、多串君と一緒にいられるしぃ」
銀時にそう言われ、土方は眉間にシワを寄せて難しい顔をしたあと、
「…………いいんじゃねーか。お前なら上手くやれるだろ」
別になんでもない、という態度で言った。
だけど銀時はそれが本音じゃないことを知っている。
内心で『ものごっさ可愛い、ば可愛いぃぃぃぃ』と叫びながら、
「……でもなぁ、新八と神楽も寂しがってるから、やっぱりかーえろ」
いつもどおりのやる気のない呑気な声で言ってやった。
「あ、そう」
土方は冷たくそう答えたけれど、銀時に見えないようにほっとした顔をしたのを、銀時は盗み見ていた。
もう辛抱できなくなって驚く土方をぎゅーっと抱き締め……たかったが、きっと怒られるので我慢する。
「じゃあ帰る。その代わり、非番になったらすぐ、早急に、迅速に連絡すること」
「あ?」
「多串くんの代役を頑張った銀さんに感謝の気持ちがあるでしょー。それまで我慢して待ってますぅ」
ふざけた言い方をしたので素っ気無くあしらわれると思ったのだが、
「……分かった」
土方はそう言ってそのまま仕事をするために部屋を出て行った。
銀時はゆっくりと畳みの上に転がって、具合が悪くなくてもちょっとだけ素直になってくれた土方に悶絶するのだった。
おわり
いつものようになんてことない話でした。
銀さんに隊長服を着せたかっただけだったからね!
可愛い土方さんをもっと書きたかったかな。