学園設定(補完)

□同級生−その4
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あの土方の言い方ではそういうことになってしまうが、そういう風には見えなかったこともあって坂田は少しショックのようだった。

土方はグッと手を握り締める。

坂田が疑問に思うのも仕方なかった。

だが"遊んでた"とかそういうことじゃなく、土方には坂田に……普通の人には想像もできないような過去がある。

そのことを言わずに済ませたかったのだが、この場をはぐらかしても坂田はきっと諦めない。

11年の時間を費やさせておいて、このまま諦めてくれるとは思えなかった。

坂田が言うように、その気持ちに応えたいという気持ちがあるのを土方は自覚している。

だからこそ、ここで諦めてもらわなければならなかった。

もう誰も死なせたくない。

この先、何百年生きることになっても、人間と深い関係にはならないと誓ったのだから。

「……ひじか……」

坂田が黙ったままの土方に声をかけようとしたとき、バサッという音とともに、薄暗い明かりがさらに遮られて暗くなる。

ん?と思って視線を上げると、黒い羽根の大きな翼が二枚、土方の背後に突然現われていた。

ぽかんとそれを食い入るように見つめていた坂田がつぶやく。

「……手品?」

「違う」

「……じゃあ、天使……あ、黒いから堕天使?」

「……んなわけあるか」

それからちょっと考えて眉間にシワをよせ、

「……もしかして、烏天狗?」

そう言われて、土方は内心でちょっと驚いた。

人間に知られている妖怪の中でも、烏天狗は割りとマイナーな存在なのにすんなりその名前が出てきたからだ。

頭が良いから知識も豊富なのだろうと思い、土方はうなづく。

妖怪が人間と交わることはできないことではなく、家族として人間に溶け込んでいる者もいる。

土方も、群れ最後の烏天狗になったときから、そうしていくべきかと試みてみた。

だが土方の妖気に耐えられなかったのか、痩せ衰え何人も亡くなってしまい土方も悲しみ、それを諦めざるを得なかった。

多少姿を変化させられるため、高校生から50代ぐらいまで繰り返し姿を変えて人の中に生きてきた。

一人で生きていくのは寂しくても、もう誰も死なせたくない。

こんな姿を見せたのだから坂田も諦めてくれるだろう。

怖がって逃げ出してくれるだろう、そう思ったのに、

「……なんだ、そういうことか……」

ぽつりと呟いてから、坂田は土方に身体を寄せるとそのまま唇を重ねてきた。

「!?」

思いがけない行動にしばらく動けなかったが、土方は我に返って慌てて身体を押し返す。

「な、なにしてんだっ」

「何って、ちゅー?」

「な、なんで……俺が怖く……気持ち悪くねーのか」

「ないよ。だって……」

平然としていた坂田がそう言うと、坂田を見ていた土方の視界が急に明るくなった。

坂田の背後に金色のもふーっとした尻尾が複数表れ、さきほどの坂田に負けないぐらい土方はぽかんとする。

正確に数えたわけじゃないが、正体はすぐに察しがついた。

「きゅ……九尾の狐!?」

「あたりー」

マイナーな自分とは比べ物にならないぐらいの大妖怪がにやっと嬉しそうに笑うものだから、土方はいろいろひっくるめて腹が立って叫んた。

「なんでもっと早く言わねーんだ!! 11年も悩んだ俺がバカみたいだろーがぁぁぁ!!!」

「ええぇぇぇ、俺のせい? 土方だって言わなかったじゃん」

「俺に九尾の正体が分かるわけねーだろ! お前は大妖怪のくせに、俺ごときの正体が見破れなかったのかコラァ!!」

「俺だって妖怪に会うのは久し振りだったんですぅぅ。なーんか良い匂いがするとは思ったんだけど、まさか同類だったとは」

「気付や!! 役にたた……うわっ」

大妖怪相手に11年分の逆恨みを爆発させていた土方だったが、油断した身体をベッドの上に引き倒された。

土方を見下ろして、坂田が意地悪そうに言う。

「もう俺を拒む理由はねーよな?」

土方は悔しそうに坂田を睨むだけで何も言えなかった。

この先ずっとずっと長い間、この狐にしたり顔をされるかと思うと腹も立つけれど、それ以上に嬉しいのも確かだったから。

そしてそんな素直じゃない土方に、坂田も嬉しそうに笑うのだった。


 おわり



というわけで、同級生と弁護士コラボ……からの、妖怪コラボでした。
本当はもっともっと細かい設定を入れて書きたかったような気がしますが、
説明文が長くなると時間がかかるからなぁ……
今ぐらいが私の限界っす(笑)
二人が言っていた「人参」の下りは、「人間」と言いかけたのを誤魔化してたのでした。
バレバレだったかもしれませんが、二段階コラボ楽しかったです。

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