学園設定(補完)

□同級生−その4
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「……いつ、来たんだ?」

「……ゆ、ゆうべ?」

「家に帰ってねえのか!?」

「……帰ってません、けど……」

"じゃあ昨夜はどこに泊まったんだ"と心配されるかと思ったのだが、十四郎の心配は余所にあった。

「じゃあ荷物受け取ってねーんじゃねーか」

「……荷物?」

きょとんとする銀時に、十四郎は頬を赤らめた。

「……昨日の日付指定でてめーんちに届くように送ってたんだよ……」

「…………な、にを?」

「……チョ、チョコレートに決まってんだろうが……」

銀時が何も言わなかったのに、まさか十四郎自らそんなことをしてくれるなんて。

驚きと嬉しさを混ぜたような顔で銀時が十四郎に詰め寄る。

「まじでか!? な、なんで言わねーんだよ!」

「い、言えるわけねーだろ……てめーも何も言わねーから、もしかしていらねーのかと思ったんだけど……もう買ってあったから無駄にしてもなんだし……」

「買ってあった? 十四郎が自分で買ったの?」

「ふ、普通のチョコだからな! バレンタイン用の可愛いのとかじゃねーから」

「でも自分で買うのは勇気いったろ、この時期」

銀時はそういうの全然気にしないのだが、男はこの時期チョコを買いにくい、という話を聞いたことがあったのでそう聞いたのだが、思いもよらぬ答えが返ってきた。

何故か土方はドヤ顔で、

「それなら大丈夫だ。去年のうちに買っておいたからっ」

と返してきたが、そうなると十四郎と付き合い始めてすぐ、ということになる。

『えぇぇぇ、そんなに前から俺にチョコ上げようと思ってくれてたのぉぉぉ』

そう思ってモジモジしている銀時に、そう思われてると気付いた十四郎が慌てて言い訳するが、

「ち、違っ……て、てめーはきっとチョコ欲しがるだろうと、お、思ってたからっ! 俺の予想が当たっただけだから!」

「でも俺、欲しいなんて言ってないしぃ。十四郎が部活に専念できるように我慢したしぃ」

「そ、それは……」

顔を真っ赤にしてそれ以上何も言えなくなってしまう。

その姿があまりにも可愛かったので、銀時は素早く辺りを見回し他に人がいないのを確認した上で、ぎゅっと抱き締めた。

「うん、ありがとう。嬉しい」

耳元で聞えた銀時の声が優しくて、十四郎から疲れが消えていくようだった。

夜になったらせめて声だけでも、と思っていた銀時が、目の前にいて暖かさも伝わってくる。

自分を心配して駆けつけてきてくれた銀時に、礼を言いたいのは自分のほうだ。

だからもう十分だった。

「……俺は大丈夫だから、お前、帰れよ」

「えええっ、明日も応援するってば」

文句を言いながら体を離そうとする銀時に、今度は十四郎のほうから抱き付いてやる。

「今晩、どうするんだよ」

「……そ、それはぁ……」

「てめーのことだから昨日もホテルとか泊まってねーんだろ。帰って家でちゃんと休めよ」

十四郎がはっきりきっぱり言い出したら、もう適当には誤魔化せないし言い逃れさせてくれない。

それを知っている銀時はしゅんとしながらうなづく。

「……分かった」

名残惜しそうに擦り寄る銀時を安心させるように十四郎は言った。

「……てめーのおかげで頑張れる。だから大人しく待ってろ」

帰ったら会いに行くから、という意味だと認識した銀時は、嬉しそうに笑った。




夕方近くになって帰ってきた銀時を母親が迎えてくれる。

詳しくは説明していないけれど、今日学校を休む旨は連絡してあったのだが特に心配している様子もない。

それどころか例の荷物を持ってきて、

「あんたに昨日荷物届いてたよ。それ、チョコだろ。あんたもすみにおけないねぇ」

なんてからかってくる始末。

受け取った荷物には十四郎の字で、品物を食品、そして宛名に"多串幸子"と書かれていて銀時は笑ってしまう。

たしか十四郎の母親の名前と旧姓だったはず。

とっさに自分の名前を書かないほうがいいかと思い、ついつい身近な女性の名前を書いてしまったのだろう。

思いがけず息子のデレ顔を見てしまい、

「そんなに嬉しいの? どんな子?」

そう訊ねたらにいっと笑って、

「可愛いくて、すげー強い子」

嬉しそうにチョコを抱えて部屋に戻っていく息子に、ちょとだけ心配そうに首を傾げる母だった。

「……強い子?」



おわり



同級生設定も無事に書けました。
余計なシーンが多すぎたなぁ……反省。
もっとシンプルに早く書けるようになりたい……
と、毎回言ってます(笑)

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