学園設定(補完)

□同級生−その4
18ページ/21ページ




翌朝、銀時は土方のいる試合会場に居た。

悪友たちに金を借り昨夜のうちに近くの町に着き、漫画喫茶で朝まで時間を潰してからここへやってきた。

学校からそのまま電車に乗ったので制服姿だったが、この会場では逆に制服のほうが目立たなくて丁度良かったなと思う。

試合会場を調べこっそりと様子を伺った。

学校をサボって応援に来たとバレたら土方に怒られるし、そこまでして応援に来たことが他の部員にバレると面倒くさい。

「胴有り! 一本!」

審判がそう言って土方の勝利を宣言されるのを見て、銀時は小さく拍手を送る。

他の部員たちのところへ戻り面を外した土方には、やはり疲れの色が出ていた。

側に行って励ましてやりたい。

最初は怒ってもきっと許してくれるし、少しは元気が出るんじゃないかと思う。

だけどまだその時じゃないのを銀時は知っていた。

土方がギリギリでも踏ん張っているのだからまだ邪魔はしない。

限界が来たときにこっそりと励ましに行こう、そう思ってここでスタンバッてるのだから。



「トシ! よくやった!」

「……おう……」

近藤が嬉しそうに出迎えてくれるのを、土方は精一杯笑顔で答えたつもりだったのだが上手く笑えていなかったらしい。

途端に心配そうな顔をされるから、深く息を吐いてもう一度笑ったが、

「大丈夫だ。もうちょっとだし、絶対優勝しような」

「……おう! 頑張ろうな!」

「良いカッコしてんじゃねーぞ、土方死ねコノヤロー」

すかさず憎まれ口をたたかれてそちらを見ると、同じく疲れた顔をした沖田が栄養補給という名目のオヤツを食っている。

「こらっ、総悟! トシは超頑張って個人も団体も勝ち続けてくれてるんだからそんなこと言っちゃいけません!」

「俺だって団体は勝ち進んでまさぁ」

「だけど個人戦は、隠れて居眠りしたまま寝過ごして不戦敗になったんだろうが」

沖田らしい情けない負け方だが一つ年下のヤツには来年がある。

夏には引退してしまう自分たちには後がないと思えば、疲れているぐらいで気を抜くわけにいかないのだ。

「……ちっ……おめーらがもうちょっとアテになりゃあ、こんなヤロウに頼らなくて済むのに」

不満そうに他の部員に八つ当たりする沖田に、土方はこれ以上何か言うのはやめた。

どうせ口喧嘩では勝てないのだから、その間に少しでも休んだほうが良い。

会場の隅に設置された待合席に座り、大きく息を吐いて目を瞑る。

"応援に来るな"と言ったけれど、銀時のあの呑気な声ともふもふの頭を見て癒やされたかった。

せめて声だけでもと思っても今は授業中だし、こっちから電話をするのも癪だ。

次の試合も勝てれば、残りは明日になる。

そしたら意地を張らずに報告がてら電話をしてみてもいいかもしれない、なんて思いながら目を開けた。

ふと視線を向けた2階の応援席に銀色のもふもふが見える。

『……自覚してる以上に限界なんだな……もふもふの幻覚が見え…………幻覚?……』

よく見知った制服を来た見覚えのある背中が、銀色のもふもふを揺らしてコソコソと会場を出ていくところだった。

「……あの腐れ天パ……」

誰も見ていなかったけれど、そう呟いた土方は嬉しそうに笑っていた。






会場外の自動販売機で、あたたか〜いお汁粉を飲みながら銀時は満足気な息を吐く。

それから今晩はどうしようかな、とか考えてみた。

十四郎もみんなもきっと頑張るから後の試合も勝つだろう。

明日があると信じているが、となると今日もまたネットカフェあたり
で一晩過ごすしかない。

金を借りた悪友たちはボンボンだったりするので金はまだまだあるの
だが、返却を考えると無駄遣いはしたくなかった。

幸いどこでも寝れるのでそれでもいいか、なんて思っている銀時だったが、

「ここで何してんだ腐れ天パ」

背後からそう声をかけられて、お汁粉の缶を落しそうなほど驚かされた。

その声が誰の声なのか間違えようもない。

が、一応誤魔化してみる。

「こ、これは天然じゃなくてオシャレパーマです。人違いじゃないですか」

「水かけて確認するぞコラァ」

裏声の銀時にようしゃことを言う十四郎に、本当に水をかけられちゃたまらんと観念することにした。

振り返ると十四郎はやっぱり怒っていて、銀時は素直に白状する。

「……おめーが頑張ってるって聞いて……ムリしてんじゃねーかって……来ちゃった」

「……んなことぐらいで学校サボんなって………あ?……」

内心では嬉しいのに、一応ガツンと説教はしておかなければと思う十四郎だったが、銀時が制服を着ているのに気付く。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ