学園設定(補完)
□同級生−その4
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サンタは甘いものが入ってそうな箱と、可愛らしくラッピングされた大きめの袋を十四郎に差し出す。
「ふぉっふぉっふぉっ、十四郎くんは良い子にしてたからプレゼントをあげよう」
髭がなく様になってないサンタクロースのじいさんからの贈り物に、十四郎は嬉しがるより胸が痛んだ。
箱のほうは明らかにケーキなので、袋のほうを受け取り開けてみる。
土方が愛して止まないマヨリーンの限定ぬいぐるみが入っていた。
「これは! げ、限定品で数が少なくて入手困難だったやつ!」
「ボンボンの友達のツテでなんとかな。ちょっと高くついたけどバイトしたしぃ。あ、ちゃんと勉強もしてたよっ、問題ねーよっ」
「そうか……ありがとう……でも、俺、プレゼント用意してない……」
「いいよ、いいよ。俺が内緒で用意しただけだしさー」
子供と変わらない顔で笑う銀時にきゅんと胸がときめくが、それは無用なときめきだった。
十四郎が感激してるのをいいことに、
「……ま、まあ、十四郎がどうしてもおれにプレゼントくれたいって言うならぁ、なんとかならないでもないんだけどぉ」
なんてことを言い出した。
子供の頃から変わらない“なんか企んだ”ときの顔で、十四郎は嫌な予感がする。
「……なんとかってなんだよ」
「なにも用意してなくてもくれられる、俺の欲しいものがあるじゃん」
「……だから、なんだよ」
「えー、ほら、男子高校生が欲しいものなんて決まってんでしょ」
「……ガンプラか?」
「それは小学生んときの俺ぇぇ! 今の俺はもっと大人なもんが欲しいんですぅぅ!」
「……大人なもんてなんだ」
「例えばぁ……あ、ほら、ちょうどよくベッドがあるし? その上でできるスポーツ的な?」
例えもなにもソレしかねーだろーが、と割りとド直球なことを言ってきた銀時に怒鳴りたくなった。
だがプレゼントを用意してくれた銀時の期待を無下に裏切ることもできない。
十四郎は期待に満ちた目で見つめる銀時から目を反らし、
「……分かった……」
そう言ってベッドに戻ると布団に入る。
「…え……まじでか……」
そうなるといいなとは思っててもさすがに動揺する銀時に、十四郎はちらりと視線を送り、
「ほら、てめーも入れよ」
布団をめくって誘ってやる。
だが、
「は、はい」
銀時がいそいそとサンタの衣装を脱ごうとするのは止めた。
「脱ぐなよ」
「え?」
「てめーは今日はサンタクロースなんだろうが。脱いだらサンタじゃねーから追い出すぞ」
「ちょっ……まあ……脱がなくてもなんとかなるけど……」
そして不満そうな顔でベッドに入ってくる銀時を、布団の中で抱き締めてやる。
思いの外積極的な十四郎に、サプライズを企んだ甲斐があったと喜ぶ銀時だったが、そう甘くもない。
ぎゅーっと抱き締められて身動きができず、
「……あ、あの、十四郎? 銀さん動けないんですけど……」
訴えたらぴしゃりと言い返された。
「てめーは動くなよ。寝てろ」
「………ええっ!!? ま、まさか十四郎がヤル気じゃ……おれ、そっちはちょっと……」
「俺も動かねー」
「…は? ……そ、それじゃスポーツにならないじゃん」
「柔道の寝技だ、スポーツだろ」
「………と、十四郎ぉぉぉ! そういうことじゃなくて、俺は……」
間違いを訴えようとする銀時だったが、もちろん十四郎も分かってないわけじゃない。
「親もいるのにできるかバカ」
そう呟いく十四郎に、自分の作戦が失敗したことを知った上で、銀時は一応抵抗を試みた。
「……俺の部屋……はやっぱり親がいるし……そ、外に行く?」
「寒いし行かねー」
「じゃあ、ちょっとだけ……かるーく寝技返しとか……」
「動いたら追い出す」
「十四郎ぉぉぉ、でも、でもぉ……」
「諦めろ………今年は」
泣き言で訴えようとする銀時に、十四郎はぴしゃりと、でも補足をつけてそう言った。
元々からの約束だし今年は我慢しろ、と。
だけど来年はなんとかするから、と。
言ってから顔を赤くする十四郎に、そう言われているんだと解釈した銀時は残念そうに、でも嬉しそうに笑った。
「じゃあ来年は十四郎がサンタ役な」
「……分かった」
「そんときはミニスカ……」
「着ねぇ!」
「ちぇっ」
そんなことを言い合いながら、お互いのぬくりもで暖かい、久しぶりに一緒のクリスマスイブを過ごす二人だった。
おわり
会話が増えちゃって長くなったな。
でも可愛い(?)二人が書けたんじゃないかと思います。
……最初はちゅーぐらいさせる予定だったんだけど、
まあ、うちの二人だからこんなもんですすね。