学園設定(補完)

□同級生−その4
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#95

作成:2019/03/20




「……今、なんて言った……」

クラスメイトが誰も居なくなった放課後の教室。

机を挟んで椅子に座っていた十四郎は、向かいで椅子の足を斜めにギイギイと体を揺らしている銀時を睨みつけた。

聞き捨てなら無いことを言われたのに、言ったほうはケロッと答える。

「だからー、俺たちもう終わりにしよう、って」

こんな態度で冗談でも言うように、ふざけたことをふざけた口調で言った銀時。

だけど冗談じゃない。

十四郎は手をぎゅっと握り締めることで怒りを押さえた。

「……なんでだ……」

「卒業するから」

「……そんな理由で……」

「十分だろー。俺は地元に残るし、十四郎は進学するし、"お別れ"の定番じゃん」

確かに定番だし、それが理由なのもかまわない。

"本当"なら。

だけどこんな大事なことを、なんでもないように言っている銀時が信じられなかった。

「……てめーが……始めたことだろうが……何、勝手なこと……」

「だからでしょ。元々その気のなかった十四郎を唆したのは俺だし、これで十四郎も解放されるじゃん」

「そんなこと言ってるんじゃねえ!!」

高校に入り同じクラスになった坂田銀時に、一目惚れだと言われて必死に口説かれた。

その気のなかった十四郎が銀時を付き合っていたのは、あれこれそれこれと上手くノセられたせいだったことも確かだ。

だけど、ソレだけが十四郎の"理由"じゃない。

それを銀時は分かってくれていると思っていたのに。

だからこそ、銀時と離れて進学することを決めたのに。

離れても大丈夫だと、思えたから。

「……本気、なのか……」

「だよ?」

「………………分かった」

分からない、嫌だ、別れてなんかやらない。

そう言いたかったけれど、今の銀時にそれを言っても無駄なことは、分かりすぎるほど分かっていた。

十四郎は立ち上がり、そのまま教室を出る。

少しだけ期待したけれど、銀時が呼び止めてくれることはなかった。



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