学園設定(補完)
□同級生−その4
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#89
作成:2018/12/29
土方は自分の部屋で机に突っ伏して大きな溜め息をついた。
志望する大学が合格ギリギリのため、部活を引退してからずーっと、ずーーーっと勉強している。
冬休みに入っても、クリスマスも勉強してたし、きっと年末年始も勉強しているだろう。
再度溜め息をついて目を閉じたとき、銀髪のモフモフが目に浮かぶ。
勉強のできない自分をバカにして、にくたらしい顔でにぃっと笑った顔だ。
マンションの隣の部屋に住む銀時は、子供の頃はなんでも同じぐらい
の仲の良い友達だった。
だけど中学ぐらいから少しずつ差が出てきた。
良い意味で真面目な十四郎は、悪い意味で固く要領が悪い。
悪い意味で適当でいい加減な銀時は、良い意味が機転が回り要領が良かった。
それは勉強にも現れ、十四郎が1日で1つしか覚えられないことが、銀時には5つ覚えられたりする。
銀時はそれをバカにしながらも丁寧に分かりやすく教えてくれようとするのだが、そのやり方は十四郎には向いていないらしい。
そのうち十四郎が部活に夢中になると、銀時とは段々疎遠になってしまった。
高校は同じところに通っているけれど、部活をしているうちはほとんど顔も合わせない。
だが部活を引退すれば登下校が同じ時間になるわけで、ばったり顔を合わせることも多くなった。
なのに挨拶もろくにできなくて、こうしてぼーっとしているときに銀時を思い出して、
『……教えてくれって……言えたら勉強も楽しくなるのかな……』
そんなことをウジウジ考えたりしてしまうのだ。
情けない自分にもう一度溜め息をついたとき、部屋のドアがノックされる。
「十四郎、頑張ってる? 夜食よー」
行き詰ってる十四郎とは裏腹に"受験生の母"が楽しくなってきたらしい母親は、毎晩暖かい夜食を差し入れてくれるようになった。
正直、あまり料理の上手くない母だったので期待していなかったのに、何か参考にしてるらしく手の込んだ美味しそうなものを作ってくれて、十四郎も毎晩楽しみになっていた。
ドアを開けたら今日は熱々の鍋焼きうどんを持っていて、良い匂いにつられて腹も鳴る。
「はい、どーぞ」
「ありがとう」
十四郎が素直に笑うと母も嬉しそうに笑い、それだけで勉強のイライラが少し治まった気がした。
なのでもう一言礼を言いたくなったら、
「あ、のさ、毎日作ってくれてありがとうな。だけど仕事も年末で忙しくて疲れてんだから、もっと簡単なもので……」
「あら、疲れてないわよ、全然」
「でも……」
「だって私が作ってるんじゃないもの」
衝撃的なことを言われた。
母の努力に感激していたのに、もしかしてレトルトとかインスタントだったのだろうか、とガッカリしていたら、
「……え……それってつまり……」
「銀ちゃんがね、毎日作ってくれてたの」
さらに衝撃的なことを言われた。
「……はぁぁぁ!? 銀時!? なんであいつが……」
「部屋の明かりが点いてるから毎晩遅くまで勉強頑張ってるみたいだから、って。料理も得意みたいよ、銀ちゃん」
器用なヤツというのは勉強だけじゃなくて料理もできるのか。
いつもならムカつくのに、美味しそうな鍋焼きうどんを手にしていたら怒ることもできない。
ずっと疎遠になっていることを銀時も気にしてくれていたのかもしれないから、明日の朝に会ったら礼を言って久しぶりに話をしようと思う十四郎だった。
おわり
……受験生の話にはなったけど……銀土?(笑)
銀時はずっと土方が好き、っていう設定ではあるんですが。
土方しか出てこなかったからね。