学園設定(補完)
□同級生−その4
12ページ/21ページ
#83
作成:2018/11/09
「土方先生! 坂田先生と付き合ってあげて!」
放課後、自クラスに生徒が残っているようだったので、早く帰れと声をかけようとしたら、先手を打たれてそう言われた。
自クラスの生徒2名と、他クラスの生徒3名が真剣な顔で土方を見つめている。
「……は?」
あまりにもいきなりすぎて、土方は少し間抜けな反応をしてしまった。
生徒にお願いされた相手は、坂田銀時という国語教師である。
3年前にこの学校に同時に赴任して、年齢も同じだったのでなんとなく一緒に行動することが多かった。
だが、考え方とか行動は似ているくせに、好きな物がことごとく違うので気が合うとは言い難い。
生徒の前でギャーギャーと口喧嘩することも多いので、まさか生徒にこんな頼まれごとをするとは思っていなかった。
だが、女性徒たちは熱意を込めて続ける。
「坂田先生は、だらしないし、やる気ないし、授業もへただけど、良い先生なんです!」
「土方先生とは気が合わなくて喧嘩ばっかりしてるけど、本当は先生のことが大好きなんです!」
「……そんなことはねーだろ」
「あります! 私たちには分かるんです!」
「……なんの根拠があってそんなこと…」
「だって、窓の外を見てなんか嬉しそうにしてるなぁと思ったら、土方先生が校庭で生徒と遊んでたり」
「昼食が終わってるのにだらだらタバコ吸ってるなぁって思ったら、土方先生が別のテーブルでまだ食事してたり」
「土方先生と喧嘩したあとはちょっと寂しそうだったりするんです!!」
次々と恥ずかしい情報を生徒に力説されて、土方はめまいがするような気がした。
そういう恋話に興味がある年頃なのかもしれないが、たとえ可愛い生徒でも、“余計なお世話”ということもある。
「……そんなことより、早く帰らないと駅までの最終バスが無くなるぞ」
明らかに面倒くさそうに話を反らした土方に、女性徒たちは分をわきまえていた。
土方は他人が押してどうにかなるタイプじゃないと分かっているのだ。
「はーい。じゃあ、先生、さようならー」
“覚えておいてくれたらいいのよ”的な素っ気なさで、女性徒たちは楽しそうに挨拶して帰って行く。
残された土方は深いため息をついた。
「……ということがあったぞ」
「まじでかー」
土方がさっきの話をすると、銀時は“なにしてくれてんのあいつら”という顔でちょっと肩を落とす。
ただの報告のようだったが、
「てめー、バレバレじゃねーか」
「……まさか、見られてるとは……」
銀時のうっかりを責めるようににらむ土方は風呂上りで、しょんぼりする銀時は食事を用意をテーブルに並べているところ。
じつは生徒に言われるまでもなく、とっくにそういう関係になっていた二人は半同棲状態だった。
学校では今まで通り、ただの同僚っぽく接していたつもりだったのだが、生徒にあんなことを言われてしまうなんて。
「気をつけろよ。本当に付き合ってるなんてバレたら……喜ばれるから」
「だよねー。いろんな意味で怖―い(笑)」
苦笑いの二人だった。
おわり
教師同士の同級生設定は初めて。
これはこれで可愛い……よね(笑)