学園設定(補完)
□同級生−その4
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作成:2018/10/11
初めて声をかけられたのは小学2年生の時だった。
「なあ、コレ、半分食うか?」
校庭の脇にあるアイスの自動販売機の前で、銀髪の同級生にそう言われた。
小学校の校内にある自動販売機で生徒は1日1つだけ、飲み物やおやつを買うことができる。
その貴重なおやつを半分分けてくれると言った男子は、同級生だけど同じクラスになったこともないし話をしたこともなかった。
ただ目立つ銀髪なので存在だけは知っていたのだ。
名前も知らないほぼ見ず知らずの相手ではあったが、"冷たいもの"と聞いて急に喉が渇いてきた。
今日は10月にしては暑くて昼休みに飲み物を買ってしまったので、言葉に甘えることにした。
「……食う」
「ん」
半分に割れるタイプのソーダアイスを1つ差し出され、そのまま礼を言って立ち去ろうかと思ったのだが、言う前に近くにあるソファに座られた。
ここで食べる気なら放って立ち去るのも白状かと思い、隣に座って一緒に食べ始める。
何も話さないので、こっちからも話さなかった。
黙って黙々とアイスを食べ、食べ終わると、
「じゃ」
そう言って先に立ち去られてしまう。
自分から声をかけてきたのに素っ気なさすぎる態度だったが、不思議といやな感じはしなかった。
そしてそんなことは次の年にも、その次の年にもあった。
その日以外に話すこともなく、知ったのは名前ぐらい。
なのに1年に一度だけ声をかけてきて、半分に分けてくれたアイスを一緒に食べる。
そんな奇妙な現象の"理由"に気付いたのは4年目の今日だった。
校舎の4階の図書室から外を見たら、もふもふの銀髪がキョロキョロと辺りを見回している。
そして校舎に入ってしばらくしたあと、また出て来てまたキョロキョロする。
誰か探しているのか、と考えてから気付いた。
『……俺を探してるのか?』
それに気付いたら、毎年同じ時期……たぶん、同じ日に声を掛けられていたような気がしてきた・
"何故か"は分からない。
もし仲良くなりたいだけならもっと言うこともやることもあっただろうに。
一緒にアイスを食べるだけでいい、なんて気持ちをなんて表したらいいのか。
そんな奇妙さも不可解さも、やっぱり何故か嫌じゃなくて。
窓を開けて下に向かって声をかけた。
「坂田っ」
顔を上げて驚いた顔をした坂田は、遠目ながらに嬉しそうだったような気もする。
ので、
「アイス買うけど、半分食うか?」
いつも坂田が声をかけてくるように、そう言ってみた。
やっぱり驚いていた坂田だったけれど、今度は遠目でもはっきり分かるぐらい嬉しそうに笑ったので、なんだかこっちまで嬉しくなってしまった。
はぴば、坂田くん。
おわり
なんとなーくな一人称で、なんとなーく銀土な話。
小学生だからね……坂田くんのあわーい恋心、ってことにしといてください。