学園設定(補完)
□同級生−その4
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#68
作成:2018/04/17
「好きです。付き合ってください」
目の前でモジモジしながらそう言う女生徒を、土方十四郎は困った顔で見つめる。
高校3年の夏休みを前に、高校生活の未練を残したくない、とでも思ったのか告白ラッシュが続いていた。
勇気を出した一人目を断ったのを皮切りに、次から次へとやってくる"刺客"にうんざりしてもいる。
「……悪い。誰とも付き合う気、ねーから」
最初からそう言っているのに、なぜチャレンジしようと思うのか。
教室に戻って机に臥せってぐったりしている土方に、さらにうんざりするような声が掛けられた。
「またフッてきたんですかぃ。モテ男はつめてーや」
「トシ!? また告白されたのか!?」
近藤に羨ましがられても、土方にとっては断るのも面倒だし、沖田には嫌味を言われるし良いことなんてなにもない。
自分が普通の男よりちょっとモテるのは自覚しているが、今回の告白ラッシュはいわば女生徒たちのノリと勢いと思い出作りだ。
こんなことがまだ続くかもれないと思うと、深い溜め息が出る。
それを見た沖田がニヤニヤと笑って言った。
「そんなに断るのが面倒なら誰かと付き合ったらいいじゃねーですかぃ」
「……あ?」
「そういえば、何でみんな断っちゃったんだ?」
「適当にみつくろって付き合えば万事解決でさぁ」
言い方は悪いが、それを考えたこともある。
今はそれほど好きじゃなくても付き合ってみなければ分からないし、気が合って長く付き合う恋人になれるかもしれない。
だが、土方にとってそれは望むところではなかった。
土方には誰かと本気で付き合うことが出来ない理由がある。
それは長い付き合いである近藤にも沖田にも言っていない、誰にも言えない理由だった。
「……その気はねーって言ってんだろ」
「もったいないなぁ。可愛い子いっぱいいただろ?」
「そういや、土方さんから女のタイプとか聞いたことねーですね」
「ああ、そうだ。どんな子が好きなんだ? 誰か紹介してやろーか?」
「近藤さんに紹介できる女なんかいねーでしょう」
避けていた話題を振られて、もやもや考えていた土方はつい、
「俺はにん……………に、人参が好きな女がいいなぁ……なんて」
言ってはいけないことを言ってしまいそうになり、二人には怪訝そうな顔をされる。
「人参!? トシ、人参好きだっけ?」
「それだけでいいんですかぃ? 変わった趣味でさぁ」
呆れられたものの誤魔化せたようでホッとする土方だった。
それからもしばらく告白ラッシュは続く。
それまでと同じようにソレを断り続けていたが、その中、変わったモノが釣れてしまった。
「土方くん、俺と付き合わね?」
放課後、職員室から教室に戻る途中の土方はそう声をかけられる。
"告白ラッシュ"の1には違いないが、いつもと違うのは相手が男だったということ。
違うクラスの坂田が楽しそうな顔で土方を見ている。
一度も同じクラスになったこともないし、合同授業もなかったし、話をしたこともない。
なのに名前を知っていたのは、その目立つ容姿のためだった。
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