学園設定(補完)
□同級生−その4
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土方十四郎は何か物音がしたような気がしてゆっくりと目を開けた。
そして、懐かしい夢を見たな、と笑みを漏らす。
今日はクリスマスイブ。
隣の坂田家との合同クリスマスパーティーは中1まで続き、その後はやらなくなった。
銀時とはクラスが離れてしまったり、十四郎は部活に力を入れていたりで、仲良くパーティーという感じでもなくなってしまったからだ。
母親たちには「これだから男の子はつまらない」と言われてしまったが、年頃の男子なんてそんなものだ。
ただ今年は違うはずだった。
久しぶりに一緒に……家族抜きで一緒にクリスマスに遊べるかと思っていたのに、あっさり「バイトがある」と言われてしまった。
だから今年もベッドで居眠りしてしまい、目が覚めたら誰も居ないという状態。
携帯を手に取って見たら、時計は11時近く、でも電話もメールも着信がない。
バイトが忙しいんだとしてもちょっとぐらい連絡できないのか、と思ったとき、物音が聞こえた。
気のせいじゃなかったのかと、音のしたほうに視線を向けると、カーテンの隙間に何やら人影が見え、そして、
「……とうしろぉぉぉぉ、開けてぇぇぇぇ……」
夢と同じ悲壮感たっぷりの声が聞こえてきた。
十四郎が慌ててベッドから降りて窓へ駆け寄ると、真っ赤なサンタクロースの衣装を着た銀時がガタガタ震えて立っていて、窓を開けると同時に飛び込んでくる。
「さささ、寒いぃぃぃぃ、ものごっさ寒いぃぃぃぃ」
小学生のころから精神的にまったく成長していない銀時に、今度は驚くことなく呆れる土方だった。
「んな格好してりゃ寒いに決まってんだろ、銀時」
呆れた声でそう言う十四郎に、銀時はぱっと顔をあげて人差し指を左右に振る。
「銀時じゃありませーん」
「……あ? なに言って……」
「サンタクロースでーす」
「……そりゃ見れば分かる……わざわざ用意したのか?」
「バイトの制服。ケーキ屋の売り子で、終わったらくれるって言うから」
「見せに来たのか? 寒いのに……」
「だってサンタクロースは、ほら、俺がやらないとダメじゃん? 十四郎がやってくれてもよかったんだけどぉ。やる? ミニスカの、可愛いやつドンキで売ってたし、買ってく……」
「やらねーし、てめーだってなんでサンタにならねーと……」
聞こうとしたら銀時がモジモジしだしたのでなんとなく察した。
「だ、だって……ほら……ゆーみんが歌ってるじゃん」
やっぱりソレか。
中学から疎遠だった銀時と、銀時の両親に頼まれて一緒に受験勉強するようになり、毎日一緒にいるうちになんとなくそういうことになった。
銀時は子供の頃からずっと好きだったと言うし、そんなことを言われたら十四郎だって嬉しかったし嫌でもないし、受験が終わるまではいわゆる“清い関係”で頑張ろう、と承諾していた。
なので、十四郎にOKされ浮かれて“恋人はサンタクロース”しに来てしまった銀時に、受験生がなにやってんだと責めることもできない。
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