原作設定(補完)

□その39
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銀時と土方が半同棲生活を初めて3ヶ月。

最初はそのために仕事を調整したり苦労もしたのだが、この生活も慣れてきて仕事もスムーズに進むようになってきた。

それが真選組全体にも伝染したのか、指名手配されていた攘夷志士たちの検挙率が上がっている。

報告書を読みながら、

「うんうん、みんな頑張ってるな」

と近藤は嬉しそうだったし、土方も初めはそう思っていた。

だがそれが続くと、何かおかしいな、と思うのが副長としての土方の役目。

検挙がほぼ夕方から夜間。

見回りの隊士たちによる、出会い頭の場合が多いのだ。

以前なら報告書を読んで喜んでいてくれた土方が、難しい顔をしていることに山崎も気付いたらしい。

長い沈黙のあとに土方が口を開くと、緊張感が走った。

「……どうした、何かあったか?」

「ど、どうしたとは?」

「出来すぎだろ。何か原因がなけりゃ、こんなに続くはずがねぇ」

「そ、それは……」

山崎のそんな反応だけで、本当に何かあるのだとモロバレだ。

だが山崎はそう簡単に口を割らないので、あっさり教えてくれそうな、部屋の隅でそ知らぬフリで菓子を食っている沖田に訊いてみた。

一番隊がかかわってることも多いので、知らないわけがない。

「総悟、何か知ってるか」

「良い餌を蒔いてるだけでさぁ」

「お、沖田隊長っ」

思ったとおりあっさり白状した沖田に、山崎は困った様子だった。

遠回しな言い方だったけれど、土方は察する。

「餌? ……………俺、か?」

土方が居ないところでばかり起こること。

土方が半同棲生活を初めてから日に日に増えていくこと。

週に何度も決まった時間に一人で屯所を出歩いていることに、攘夷志士たちが気付いて土方の命を狙い始めた。

宿敵である土方を捕獲なり殺害なりできれば、同士たちの仇も討てるし、真選組に大きなダメージを与えられる。

そう上手くいくはずもなく次々に攘夷志士が捕縛されても、土方を狙い続ける意味はある、そう思ったのだろう。

そんな重要なことが土方には知らされていなかった。

言えば土方は銀時との同棲を止めてしまう。

それを阻止したかった。

土方の為か、銀時の為か、はたまた自分達の為かは知らないが、それはなんとか3ヶ月持った。

いつまでも土方に隠し通せるとは思っていなかったけど、という顔で山崎は小さいため息をつく。

「すみません、黙ってて」

「……近藤さんも知らねーのか?」

「局長が知ったら絶対副長に知らせますから」

土方の命が狙われているというのに、検挙のためにそれを容認する人っじゃない。

待ち構えていたからといって、相手がどんな手法手段でくるか分からなければ100%安全ということはないのだから。

そう考えてから、土方は何かに気付いたように、報告書を読み返す。

案の定、最近捕縛した攘夷志士の中にはかなりの手練れもいた。

いくら鍛練しているとはいえ、一介の隊士などでは敵わないような相手だ。

敵うとすれば沖田だが、

「……総悟、てめーもこれに参加してたのか?」

「は? なんで俺がみすみす土方さんの命を狙ってる奴を捕まえなきゃいけねーんで?」

自分の手を汚さずに土方が死んでくれるかもしれないのに、と考えているので沖田のはずがない。


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