原作設定(補完)

□その39
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小ネタ、沖田


銀時は昼間のかぶき町をプラプラ歩いていた。

(中略)

会いたい人には会えないけど、別にどうでもいい人には会えるもので、

「旦那、相変わらず暇そうですねぃ」

そう声をかけてきたのは沖田だった。

屯所を留守にする分、忙しくしている土方とは違い、土方がいない分、なぜか暇そうにしている沖田には割と遭遇できていた。

「……沖田くんも相変わらず暇そうだね」

「心外でさぁ。団子を食うのも仕事のうちですぜぃ」

「いいなぁ、それ。俺にもその仕事紹介してくんない?」

「旦那の頼みなら仕方ねーや」

そう言って沖田は皿の上の団子を勧めてきたので、銀時は隣に座って素直にそれを受け取った。

相手が沖田だけに、何か裏がありそうなのは承知の上だ。

銀時が団子を一本食べ終わったところで、案の定の頼み事がきた。

「旦那、今度、例の部屋に遊びに行っていいですかぃ?」

「……例の部屋、って?」

「お惚けはなしにしてくだせぇ。旦那と副長の愛の巣でさぁ」

お茶を飲んでたら盛大に吹き出しただろう。

愛の巣、ときたか。

本来なら恥ずかしくて照れてしまうような言葉も、沖田に言われると何やら恐ろしい言葉に聞こえる。

ので、銀時は無表情で答えた。

「お断りします」

「えぇぇ、俺と旦那の仲じゃねーですかぃ」

「どんな仲ですか」

「親友の契りを交わした仲でさぁ」

「あー、そうね。でもお断りします」

何を企んでいるの分からないが、ここは土方のためにもきっぱりとお断りしておこう、と銀時は容赦なく拒絶してみる。

が、沖田のほうもあっさりと引くはずもなく、

「……もう土方さんが旦那と暮らし初めて2ヶ月になるじゃねーですかぃ。最初は居ないのことに清々してたんですが、だんだん寂しくなってきやして……せめてどんな風に暮らしてるのか見て安心したいんでさぁ」

なんて言い出すが、あいにくドSの本心と建前は分かりすぎるほど分かるのだ。

「俺にそういうの通用しないの分かるでしょ」

さらりと流してやったら、悔しそうな顔で舌打ちされた。

食った団子を返せと言われないうちに、

「じゃ、そういうことで。ご馳走さま」

銀時はそそくさと退散するのだった。

追い討ちをかけられなかったので、無事沖田の企みを阻止できたと、銀時はホッとする。

が、当然、沖田もそんなに甘くない。

翌々日、めずらしく銀時のほうが部屋に戻るのが遅くなって、

「ただいまぁ、遅くなってごめーん」

なんて言ってみたら、中から背筋が寒くなる声が返ってきた。

「おけぇりなせぇ」

「!!!?」

狭い部屋なので、玄関から入ってすぐ部屋でくつろぐ沖田と、申し訳なさそうな顔をしている土方が見えた。

その様子から、土方が沖田を連れてきたのだと、想像できる。

それから沖田は軽く二人をからかったり、部屋をきょろきょろ見回したり、銀時が作ったご飯を一緒に食べたりして、遅くなる前に屯所に帰って行った。

沖田が何をしに来たのなんか安易に想像できた。

あれこれ観察してその情報を、屯所でおもしろおかしく気色悪がりながら隊士たちに話してきかせるに違いない。

そんなの土方にも想像できるだろうに。

「な、なんで沖田くん、連れてきちゃったの?」

銀時が始終不満そうだったのに気付いていたのか、土方はしゅんとしながら答える。

「そ、総悟が……俺がどんなところで暮らしているのか心配だって……寂しそうだったらから、つい……」

『ああぁぁぁぁ、なんで騙されちゃうの? いっつも沖田くんにひどい目に合ってるくせに、もう、なんで油断しちゃうの? なんてバカワイイのこの子ぉぉぉぉ!!!』

本当には沖田を嫌いになりきれない土方と、それが分かってるから酷いことをしても許されると思ってる沖田。

二人のそんな関係にちょっぴり嫉妬しながら、いじめられた土方をしっかり慰めてやろうと心に決める銀時だった。



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