原作設定(補完)

□その39
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小ネタ、新八。

見廻りの途中、沖田に逃げられた土方はぐったりしながら歩いていた。

今日は仕事が終わったら向こうの部屋に帰る日なので、できれば機嫌良く過ごしたいのに。

イライラしていた土方の前に、ひょこっとのんきな顔が出てくる。

「土方さん、こんにちは」

「お、おう」

神楽とは違い新八のほうはにこやかに挨拶をしてきた。

新八とも、半同棲生活を決めてから初めて会うが、それほど不満はないのだろうか。

「今日は向こうの部屋ですよね」

「あ、ああ」

「銀さんが朝から機嫌が良いんですぐ分かります」

「……アイツ、仕事はちゃんとやってんのか?」

ずいぶん浮かれてるようなので、そこが心配になる土方だったが、新八は苦笑しながら答えた。

「僕もそのへんは心配だったんです。今までは土方さんとのデート代を稼ぐために割りと真面目に仕事してたんですけど、部屋だとデート代いらいないし」

やっぱり心配はかけていたようだが、

「でも今は、土方さんと会える日に仕事が入らないように、他の日に頑張ることにしたみたいなんで、大丈夫ですよ。まあ、でも、まだ給料は貰えてないんですけど」

新八はそれでも十分のようだった。

「……そうか」

「はい。あ、それじゃあ。たまには万事屋にも遊びに来てくださいね」

元気な背中を見送って土方は小さくため息。

それから銀時が待っている部屋に向かった。

「あなたぁ、お帰りなさぁい。熱々のお風呂にする? 愛情たっぷりのご飯にする? それとも銀さんのギンギンさんにする?」

毎回同じようなことを言って出迎える銀時に、いつもなら冷ややかな反応をするのに、今日は哀れみに満ちた目をしている。

「……ん? 土方くん?」

「てめーは……情けねーなぁ」

「え、何が? ちょっ、土方くん!?」

従業員に給料を払えないダメ社長でも新八に慕われている男に呆れる土方だった。





小ネタ、山崎


銀時は昼間のかぶき町をプラプラ歩いていた。

半同棲生活も二月になり、今のところ問題なく順調にラブラブ生活を送れていた。

ただ夜にゆっくりできる分、土方が昼間に銀時と“ばったり遭遇”をしてくれることがなくなり、こうやってプラプラしていても会えないのが寂しくもある。

会いたい人には会えないけど、別にどうでもいい人には会えるもので、

「あ、旦那。こんにちは」

そう声をかけてきたのは山崎だった。

珍しいことに、団子屋の長椅子に座ってぼけっとした表情で茶などしている。

銀時は当然のように近くに座り当然のように皿の団子を一本横取りして、仕方なく返事をしてやった。

「どうしたの、ずいぶん暇そうだね」

「はぁ……まあ」

やる気のない返事でどうやら重症のようだ。

山崎は銀時をチラリと見て、銀時にも責任の一端がある憂鬱の原因について呟くように言った。

「副長が屯所に居ないとなんだか気合いが入らなくて……」

「……土方くんは、俺が居なくてみんな羽を伸ばせてる、って言ってたけど?」

「そりゃ初めは嬉しかったし……今でもみんなは喜んでるんですけどね……月の半分も副長が居ない、なんてことなかったんで……」

土方直属の部下、というわけではないようだが、仕事の切り盛り上、指示や報告は土方相手が多いのだろう。

叱責されたり追いかけ回されてたりするのを良く見かけていたが、それが減って寂しくなってしまっているようだ。

『まあ、ジミーだからいいか』

と銀時には2本目の団子を盗みながら思った。

だが、山崎はため息をつきながら、銀時をも切なくさせる情報を1つ呟く。

「それに……副長、最近は、旦那のところへ行くのに、“じゃあ、帰るから”って言うんですよねぇ」

ずっと屯所が土方の帰る場所だったはずなのに。

山崎にとってはそれがとても寂しいことなのだろうが、銀時は小さくため息をついて一言言ってやる。

「……大丈夫だよ、それは」

「え?」

「土方くん、そっちに戻るときも“帰る”って言ってるから」

あまり気にしていなかったが、山崎に改めて言われてみれば土方はそう言ってたと気付く。

二人で住んでいる場所が土方のすべてであってくれれば嬉しいのが、そうなるにはまだまだ時間がかかりそうだし、もしかしたら永久に無理かもしれない。

だけど土方にとっては、両方が帰る場所なのだ。

銀時にそう教えられた山崎は、

「……そう、ですか……」

寂しいけれどちょっと嬉しそうに答え、

「そうですよ」

銀時も寂しいけれどちょっと嬉しそうに返すのだった。



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