原作設定(補完)

□その39
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「……というわけで、銀さんはあれからこっそり土方さんを見るしかできなくなってしまったんです」

銀時が諦めて黙っていることに決めたことを洗いざらい話してしまったのは、決してお通のライブチケットが欲しいからだけじゃない。

あれから銀時はずっと元気ないし、銀時にとっても土方と喧嘩するのは楽しかったのだと察したからだ。

だが言ってしまってから、土方が銀時の気持ちをしって気持ち悪がり、もう話すらしてくれなくなるかもと気付いて、

「あ、銀さんは本当に真剣に……」

ちゃんと念を押そうを土方を見て、ぽかんとする。

土方は何も言わなかったが、そのかわり顔を真っ赤っかに染めていた。

「…土方さん?」

「…な、なんだよ…」

怒りのあまり、とかじゃないのは分かる。

だって真っ赤な顔で平静を装いながら、土方はちょっと嬉しそうだったから。

「……あの、もしかして土方さんも銀さ…」

「ねーよっ、あるわけねーだろっ!」

食い気味に否定したあと土方は逃走を決めたらしい。

背中を向けて少し離れてから、

「あり得ねーだろっ!!」

と叫んでぴゅーっと姿を消してしまった。

「まじでか」

残された新八は信じられないように呟いてから、手に残ったお通のライブチケットを見て、

「……一石二鳥、かな」

満足そうに笑った。




「あり得ねーし……絶対ねーし……んなこと……ねーよ……」

新八と別れたあと、土方はぶつぶつ言いながら当て所もなく歩いていた。

信じられないのは自分の気持ち。

新八にあんな話を聞かされ驚くと同時に嬉しくなって、そう思ったことが恥ずかしくなりつい赤面してしまった。

情けなくも逃げ出すことしかできなかったが、きっと誤魔化せていないだろうと思う。

ストレス発散のために銀時と喧嘩ばかりしてきたけれど、あれだけ言いたい放題したら嫌われてしまうかもしれない、というか自分なら嫌いになって顔も見たくなくなる。

だから銀時が近寄ってこなくなったとき、そうなってしまったのかと悲しくて寂しかった気持ちを怒りに変えたのだ。

その悲しみとか寂しさの理由が、銀時への想いだったのかもしれない。

銀時の気持ちを聞いてそれに気付くなんて、単純すぎて自分でも呆れてしまう。

とぼとぼ歩いていたら、いつもは見廻りで来ないことろまで来てしまった。

川原のある大きな川の側で、辺りを見回して銀色のもふもふっとしたものを見つけた。

川のほうを向いて地面に座り込み、背中を丸めて下を向き落ち込んでいるように見える。

タイミング的に新八からさきほどの話を聞いているとは思えず、だとしたら落ち込んでいる理由は土方のことだろう。

声ぐらいかけてやったほうがいいかもしれない。

何と言ってやろうかと思いながら近づいていくうちに、銀時が下を向いてなにやらモゾモゾしているのに気が付いた。

落ち込んでるわけじゃなくて何かしてるのか、と土方はこっそり後ろに立つ。

集中しているのかぼんやりしているのか銀時は気付かず、そっと覗いてみたら、銀時は地面に木の枝で"土方"といっぱい書き込んでいた。

ソレで頭の中がいっぱいです、と言ってるようなものだ。

「……ふっ」

思わず吹き出してしまった土方に、我に返った銀時が驚いて振り返った。

「ひ、ひひひ、土方っ!?」

「書き取りかよ」

「こ、ここ、これはそのっ!」

慌てて手で証拠を消している銀時に、銀時の気持ちを知っている分、土方は余裕の笑みを浮かべる。

「これは?」

「だ、だから、そのう……」

「だから?」

「つ、つまり、そのう……」

避けられてショックを受けた腹いせにもうちょっと現状を楽しんでから、新八に全部聞いたことと自分の気持ちを教えてやろうと思う土方だった。


 おわり



うん、いつもの二人でした。
やっぱり銀さんがヘタレだと萌えます(笑)

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