原作設定(補完)

□その39
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驚いて心臓をバクバクいわせながら電話をとったら、その内容にぎくりとさせられてしまう。

「万事屋の旦那ですか!? あの、唐突なんですが、副長をどこかで見かけませんでしたか!?」

声はおそらく山崎で慌てている様子だった。

目の前にその土方がいるので動揺しそうになるのを隠し、銀時はとぼけつつ聞き返す。

「ひ、土方くん? ど、どうしたの?」

「ちょっとトラブルがありまして……屯所からいつのまにか逃げ出してしまって」

「……逃げ出す? なんだか物騒じゃね」

「いえ、そんな大したことじゃないんですが……場合によっては大したことになりかねない、という話でして……」

山崎の歯切れの悪い話に、ようやく銀時も少し落ち着いてきた。

もしかしたら、土方がこうなってしまっているのは事故のせいじゃなく、元からだったのではないか。

「どういう話?」

そう尋ねたら、電話の向こうで山崎が言っていいものかどうか躊躇っているのが伝わってきたが、仕方ないと判断したらしい。

「実は、昨日の捕り物でやっかいなウィルスに感染しまして……」

「ウィルス?」

「感染した連中が妙なことを言い始めて……局長は姐御とラブラブだと言うし、沖田隊長は副長になったつもりでいるし……」

「……それって、いつも通りじゃね?」

「いや、いつもより本気なんですよ。思い込んでるというか」

「思い込み、ねぇ」

「……土方くんも?」

「それが副長はいつも通りで変わりがなかったんですよ。でもウィルスに感染してるのは間違いないので、何を言い出すのか心配なんです」

なるほど、と銀時は納得する。

どうやら思っていたように、土方がこうなってしまった原因は自分にはなさそうだ。

だと分かったら早急に回収してもらいたい。

「……土方くんなら、ここにいるよ」

「えっ!? マジですか!?」

「様子がおかしかったんでとりあえずうちに来てもらった。これ、治んの?」

「はい! 治療薬が手に入ったので、すぐ行きます!」

山崎は慌てて電話を切ったので、急いでやって来るまで10分ぐらいだろう。

銀時は深い溜め息をついてから、ソファに座っている土方を改めて見る。

会話から自分のことを言っているのと、どうやら誰かが迎えに来るのが分かったのか、再びむすーっと不機嫌そうな顔をしていた。

「俺を帰すのか?」

「……アイツらが心配してるし」

「……てめーは俺が居なくてもいいのかよ」

拗ねる土方を見て、銀時はふと気が付く。

お妙と付き合ってると思い込んでいた近藤、真選組副長になったと思いこんでいた沖田。

どうしてそうなったか、理由はわりと簡単だ。

二人ともそれを望んでいたから。

となると、土方がこうなってしまったのは……。

『……えー……まじでか……あり得なくね? 土方くんが、俺を? えー……』

銀時が信じられないものを見るようにじーっと土方を見つめていたら、それが恥ずかしくなったのか土方は顔を赤くしてぷいっと逸らす。

謎の変貌を遂げた土方を怪しんでいるうちは気持ち悪いだけだったのだが、好かれているかと思うと拗ねる姿が可愛いと思えなくもない。

『いやいやいや、でも土方くんだから。うん、ウィルスが逆に作用してしまった可能性もなくはないよね。嫌いなのに好きみたいになっちゃったとか。うんうん』

早合点を改めていると、玄関のチャイムが鳴って山崎がやってきた。

そして土方の"変化"を見て呆然とする。

銀時の背後に隠れて迎えに来た山崎を拒絶し、

「帰らねー。俺はここで銀時と暮らすんだ。真選組にはここから通う!」

とか言っているので、その反応は無理もない。

「えっと……副長は、そのう」

「まあ、とりあえず治してから本人に聞くのが一番だと思うけど」

「そ、そうですね」

それから何とか宥めすかして薬を飲ませることに成功した。

が、ウィルスの作用が収まって我に返ったのか、土方は両手で顔を覆って俯いてしまう。

どうやら恥ずかしいらしい。

「ひーじかーたくーん?」

「…………す、すまねぇ」

「ん?」

「……てめーには迷惑だって分かってる。だからこのことは忘れてくれていい……というか、忘れてくれ、頼むから」

ということは、ウィルスが逆に作用してしてしまった、ということじゃないようだ。

銀時を好きで付き合ってると思い込み、それがバレて恥ずかしがる土方は、単純ではあるがやっぱり可愛いと思える。

なので、にいっと笑って言うと、

「どうしよっかなぁ」

「……あ?」

「忘れるのもったいないなぁ、なーんてね」

「な、何言ってんだコラァ」

と顔を赤くして答えた土方に、嬉しくなる銀時だった。


 おわり



銀さん……単純だ(笑)
メロメロでツンデレな土方さんっていうも書きたかったの。

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