原作設定(補完)
□その39
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土方は改めて報告書をめくる。
そこには捕縛の状況などが記載されていて、最後には怪我の有無が書かれている。
危険な犯罪者を相手にするのだから、両者無事ですまないことが多いのだが、そこには“打撲”と書かれていた。
こちらの被害はなし。
沖田でもやっとという相手に刀を抜いて怪我なしで済むだろうか。
そもそも一体誰が……。
そう思ったとき、それが可能な人間が頭をよぎる。
「……山崎」
「は、はいっ」
「こいつ、捕まえたの誰だ」
「そ、それは……そのう……」
汗をかきながらもごまかそうとしているというこは、やっぱり誰なのか知っているはず。
土方がいっそう低い声で訊ねると、
「だ、れ、だ」
「万事屋の旦那です!!」
ぺろりと白状してくれた。
沖田が“あーあ”というため息をついたから間違いないだろう。
確かに銀時なら可能だし、土方には心当たりもあった。
ときどき、土方が部屋に着いたとき飯の支度がしてあるのに銀時が居ないことがあった。
ん?と思っていると、猛ダッシュで銀時が玄関に飛び込んでくる。
「ひ、土方くん、おかえりっ!」
「……お帰りはてめーだろ。どこ行ってたんだ?」
「え!? あ、えっと……ま……マヨ! マヨネーズが足りなかったから買いにね!」
「……手ぶらじゃねーか」
「あははははっ、財布忘れちゃって! 銀さん、うっかり!」
白々しいが、まあいいかと土方も思って追求しないでしまった。
あれがそうだったのだろうか。
険しい顔をしている土方に、山崎がせめてもと言い訳をした。
「屯所を出る副長の回りに怪しい見張りがいることに気付いたのは旦那なんです。副長を迎えに来たらコソコソしてる連中が居るんで捕まえてくれて」
“迎えに来た”という恥ずかしい行動はさておき、土方が狙われていることに早急に気付けたのは幸いだった。
なのでそれから屯所を出る土方には護衛がつき、銀時も積極的にそれに協力してくれたおかげで大勢の攘夷志士を捕まえることができた、というわけだ。
なにもかもが銀時のおかげ。
でも土方にはなにもかもが気に入らない。
夕方になって土方は煙草をふかしながら屯所を出た。
人気はなく静かだ。
土方はちらりと辺りを見てからふかーいため息をついて言った。
「万事屋!!」
「は、はいぃぃぃぃ!!」
近くにあったゴミ箱から、ぬぼっと銀時が姿を表す。
それから『しまった!』と顔面を蒼白させた。
名前を呼ばれて思わず飛び出してしまったが、隠れてこっそり護衛していたのがバレたら同棲生活を解消されてしまうかもしれない。
情けない顔をしている銀時を見て土方はもう一度ため息をつき、
「……帰るぞ」
そう言って歩き出した。
すたすたと二人の部屋に向かって歩く土方に、銀時は嬉しそうにわ笑って急いで後を追いかけるのだった。
おわり
同棲生活というドキドキエロエロなシチュにもかかわらず、
エロいことが何もないという体たらく。
まあ、うちの二人に誰もエロは期待してないでしょう。
昔のネタが消化できて幸せでした。