原作設定(補完)
□その39
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#386
作成:2018/07/06
土方はイライラしていた。
真選組副長として、外にも中にも、上にも下にも問題児ばかりを抱えストレスは溜まりっぱなし。
だがイライラの原因はソレじゃなかった。
頭に浮かんでいるのは、万事屋の坂田銀時。
会えば喧嘩ばかりしていた日々。
それが生活のイライラ解消になっていたのに気付いたのだ。
なので売り言葉に買い言葉、本気で喧嘩をしていても内心では楽しかった。
"真選組副長が市民と本気で喧嘩している"と最初は野次馬もいたが、もういつものことなのでみんな素通りするようになるほど。
そんな生活に満足してたのに、銀時を街で見かけるけれど寄ってこなくなった。
声をかけて追いかけてみたら逃げられた。
『なんなんだあのヤロウ!』
ネガティブな想像で落ち込む前に態度を急変させた銀時に腹がたってしまい、ある日、町でばったり会った新八の捕獲に成功する。
が、
「え…………し、知りませんよ」
なんて明らかに動揺した様子でシラを切られた。
だが土方は、新八を陥落させるための良いアイテムをたまたま持っていたのだ。
「そうか…………実は、こんなものがあるんだが……」
そよ姫が見たいと言ったので、厳重態勢で催される"寺門通ライブ"の招待券だった。
安全を考えて一般市民は入手できないのだが、観客が誰もいないのでは盛り上がりに欠けるので、関係者に配るためのもの。
一般には販売されなくても、親衛隊ともなれば情報は入ってくる。
新八はぱっと目の色と態度を変えて、
「喋ります、なんでも喋ります、洗いざらい喋ります」
あっさり白状するのだった。
++++
「あぁぁぁぁ!! ったく、あの瞳孔開きっぱなしヤロウめ! 俺の顔を見るたびに喧嘩ふっかけてきやがって!!」
「また土方さんですか? もう長い付き合いになるんだから仲良くしたらどうです?」
「俺のせいじゃありませんんん! あっちが喧嘩売るんだからね!」
「買うほうも買うほうですし、銀さんから売ることもあるじゃないですか」
「先手必勝! 銀さんだってやるときゃやるよ!」
「だからやっちゃダメですって。だいたい土方さんの何が気に入らないんですか?」
「そんなの、モテモテからだに決まってんじゃん!」
「そこかよっ」
「顔が良くてスタイル良くて仕事できて、頭も良いし金も持ってるぐらいでモテちゃってよー」
「……銀さんは土方さんが好きなんですね」
「はぁ? なに言っちゃってんの? 俺の話聞いてた?」
「だって、顔が良くて、とか、カッコイイと思ってるんですよね」
「…いや、それは客観的に見て、だよ。女どももそう言ってたし」
「でも最初のころは、"あんなのたいしたことない。俺のほうがカッコいい"って言ってましたよ。土方さんを認めるなんて好意的じゃないですか」
「……あははは、それはね、銀さんも大人になったってことだよ。意地を張ってるばかりじゃないからね」
「はいはい」
翌朝。
「銀さーん、いい加減起きてくださいよ」
「…………ぱっつぁん」
「あれ? 起きてたんですか?」
「…………どうしよう」
「!? 何したんですか!? おととい貰った仕事の報酬全部パチンコですったとか、変な勧誘詐欺にひっかかったとか、頼まれて誰かの保証人になってサインしたとかじゃないでしょうね!?」
「…………もっとヤバイ」
「もっと!? 銀さん!! 一体何したんですかっ!!」
「…………俺……土方くんのこと好きかもしんない……」
「……は?」
「昨日あれからずーーーーっと考えたんだけど、考えれば考えるほど、目つき悪いの可愛いなとか、マヨネーズ食ってるの幸せそうだなとか、近藤と一緒にいると和んでて近藤むかつくとか……もう土方くんのことで頭いっぱいで……」
「……ぷっ……あはははははは!」
「わ、笑い事じゃなくね?」
「ふふふ。良かったじゃないですか。土方さんと仲良くする理由ができて」
「…………無理」
「どうしてですか」
「アイツの前でいつもどおりに出来るか自信ない……っていうか、できない、たぶん」
「……じゃあ、いっそのこと告ってしまうとか」
「バカ、できるかバカ。アイツが俺を好きになるはずなんか……ねぇだろ」
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