原作設定(補完)
□その39
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#384
作成:2018/06/27
銀時は団子屋の店先で、貧乏揺すりをしていた。
本当に貧乏だから、ではなく、イライラすることがあったからだ。
実は、ついさっきここで大人げなく口喧嘩をしたばかり。
真選組副長、土方十四郎。
もう長い付き合いになるのに、どうしても顔を合わせれば喧嘩になってしまうのだ。
初めはそんな二人をみんなはハラハラして見守ったものだが、今は心配すらしてくれなくなった。
呆れられてもなぜか土方の顔を見ると喧嘩を売らずにはいられないのだ。
それはどうしてなのか。
喧嘩をした後に何度もそれを考えて、考えて、考えて。
ある日、突拍子もない答えにたどり着く。
『あれ、もしかして、俺、土方くんのこと……好きなんじゃね?』
土方と喧嘩してても、最初は確かにムカついただけだったのに。
次第に会うのが楽しみになった。
自分を見て嫌そうにする顔も、怒った顔も、また見たい。
そう思っていることに気がついた。
本当は普通の顔ももっと見たいけれど、和やかに話せるような内容もないし、きっと土方がそれを望まないだろう。
だからせめて喧嘩を売って話を続けるしかない、そう無意識に思っていたようだ。
だけどそれで十分だと思えて、何度も、何度も、何度もそうした。
いつか土方が本気で嫌がって団子屋に顔を見せなくなるかもしれない、なんて怯えながら。
だから今日も喧嘩してしまったけれど、いつもなら幸せな気分になれたはずなのに、そうならなかった。
言い合いのうちに土方が、
「てめーも近藤さんを見習って大将らしくしやがれ。懐が広くて男らしくて優しくて、すげー人なんだよ」
なんて近藤をべた褒めしたからだ。
それが面白くなくてイライラしているのだった。
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