原作設定(補完)
□その39
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#382
作成:2018/06/25
「明後日、非番になった」
“明後日? ちょっと待って……あ……あー、ごめん。明後日は仕事が入ってるなぁ”
「そうか。分かった」
“マジでごめんな?”
「いい。次の非番が決まったらまた電話する」
“うん、待ってる”
いい歳をした大人ならこんなことはよくある話で、会いたいときに会えないのも我慢しなくちゃいけないことだ。
だけど、今月になってそれが何度も何度も繰り返され、結局一度も会えていない。
「……仕事仕事って、なんだってんだ……今まではいつでも暇だったくせに……6月に入って急に………ま、まさか……あのことが原因なのか?」
先月、土方のほうが仕事が忙しくてしばらく会えなかったせいで、久々に会った夜、やたら気分が盛り上がってしまったのだ。
「……俺が……あんなことしたり、ああして欲しいとか、こうして欲しいとか言ったりしたせいか? ……だ、だってよ、あの時は、こう…なんていうか……そういう気分だったし……あ、あいつだって嫌がってなかったつーか、むしろノリノリだったし…」
だが、後になって我に返ったら恥ずかしくて悶絶したのも事実で、銀時も普段とのギャップに呆れてしまったのかもしれない。
「……だからもうしたくなくなったとか……会いたくなくなったのか?」
一度そう思ってしまったら、もうどうにもこうにもそれ以外考えられなくなり、次の非番に会うのを断られたあと、押さえきれなくなってしまった。
断られたけれど、土方は万事屋に押し掛けた。
仕事のはずなのに万事屋に明かりが点いていて、やっぱり仕事なんて嘘で会いたくなかったのだ、と証明されてへこみそうになる。
だけどここで帰ってしまったら同じことの繰り返しだ。
土方はぐっと拳を握りしめ、万事屋の玄関の扉を開けたら、
「ぶははははははっ! ト、トッシーが来たアル!」
神楽に爆笑された。
「な、なんだ?」
「ぶふふっ、くくっ、よ、よく来たアル、入るヨロシ」
「い、いいのか?」
神楽が居たら銀時とそういう話ができないかと思ったのだが、なぜか上機嫌で入れてくれた。
が、それとはうらはらに部屋の中から銀時の叫び声。
「神楽ぁぁぁ!! 勝手に決めんな! ダメだから! 銀さん、今、超忙しくて会えないから、帰ってもらって!!」
顔も見せずにそんなことを言われたら、むかついて逆に会ってやろうと思うものである。
「上がるぞ!」
土方は眉間にシワを寄せてズカズカと上がり込んだ。
「ダメだって言って……ちょっ、神楽! 離しなさい! こら!」
「いい加減、観念するネ」
「や、やめっ、神楽ちゃん! お願……」
何やらギャーギャーと奥で騒いでいるが、土方はかまわず部屋に飛び込む。
そこには、神楽に羽交い締めにされて動けず、それでも見苦しく暴れる銀時がいた。
なぜそんなに嫌がるのか、土方に嘘をついてまで会いたがらなかったのか。
その理由は一目瞭然だった。
そう言えば、土方が非番の日の天気予報はいつも雨だったのを思い出す。
仕方ない、今は梅雨時なのだから。
「いやぁぁぁぁ、見ないでぇぇぇぇ!!」
そう叫ぶ銀時の頭は、もふもふもふもふもふーっと天パーがいつもより二倍ぐらいに膨らんでいた。
「……くだらねえ」
「多串くんには分かりませんんんん!!! 俺の繊細な気持ちなんてぇぇぇぇぇ!!!」
銀時のささやかなプライドのおかげで、余計なことを考えてモヤモヤしたり、エロかったことを後悔してクヨクヨしたりしたが、内心ではほっとしている土方だった。
おわり
お約束の梅雨ネタ。
エロをちらつかせてみましたが、
どんな風にエロかったかは想像におまかせします(笑)