原作設定(補完)

□その38
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団子屋の店先が見えてきたとき、土方の姿を見つけてドキリとする。

割と遭遇することが多い店ではあったが、土方が先に来ていたことはなかったからだ。

めずらしーな、と思いながらウキウキした足取りで、でも平然を装って近づいて足が止まった。

もう一つめずらしいことを発見した。

「土方?」

「!? お、おう……なんだよ」

何かぼんやりしていた土方に声をかけたら驚かれてしまったが、銀時が不思議そうな顔をしているので眉を寄せている。

銀時が不思議がっているのは、土方の隣に置かれた皿に山ほどの団子の串が乗っていたから。

ざっと数えても20本近くありそうなソレに、

「何それ、どうしたの? いつからいたの?」

「こ、これは……は、腹が減ってたんだよっ」

土方は動揺しながらちょっと無理がある言い訳をした。

甘味好きの銀時ならともかく、腹を満たしたいなら普通に飯とかを食べればいいのに。

もちろん本当に腹が減っていたわけではなく、緊張して落ち着かなくてじっとしていられなくて、それを誤魔化すために団子を食べていたらそんな数になってしまったのだ。

言った土方も、無理があるだろぉぉぉ、と思って全身に嫌な汗をかいていた。

ここで余計な言い合いをして喧嘩になって、本題に入れなかったらどうしようかと思ったのだが、

「ふーん、めずらしいな」

銀時はそれだけ言って、土方の近くに座ると自分の団子を注文する。

土方が長居してくれたおかげですれ違わずに済んだのだから、銀時にはどんな理由でも良かったのだ。

ただこれだけ食ってたら満腹ですぐ帰ってしまうかと思われたのに、

「……俺にも茶ぁ、おかわりくれ」

土方は店員にそう頼んで、また帰る気配を見せない。

こんなことをされるから、ちょっとは仲良くなれたのかと勘違いしてしまいそうになる。

ちょっと嬉しくてさっきのニュースなど忘れていた銀時だったが、いつものようにチラ見する土方の様子がおかしいことに段々気が付いてきた。

いつもならそっぽを向いているか喧嘩をしているかの土方が、落ち着かない様子で黙ったまま、何度か目が合うのだ。

「……なに?」

「な……なんでもねーよ」

そうは言っても、顔色は赤くなったり青くなったりしてるし、挙動不審でソワソワしてるし、そのうち汗も浮かんできて、銀時も心配になってきた。

「おい? どっか具合悪いのか? あ、団子の食いすぎで気持ち悪いとか……」

「ど、どこも悪くなんか……」

「顔色悪いし、汗もかいてんぞ」

銀時にそう言われて、土方は慌てて着物の袖で顔を拭う。

そのとき、いつもは前髪で隠れているおでこに、ちらりと赤いものがついているのを銀時は見た。

すぐにニュースで言っていたことが頭に浮かぶ。

「……土方?」

「だから平気だって……」

「じゃなくて……ちょっと……」

頑なに否定する土方に銀時は手の伸ばし、逃げようとしないのでそのまま前髪を少し掻きあげた。

そこにははっきりとハートマークが浮かんでいる。

ちょうどお茶を運んできた店員にそれを見るよう促してみたが、

「なあ、これ」

「……はい?」

"おでこにハートマーク"なんておかしなものが付いているのに、首を傾げられた。

見えていないのだ。



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