原作設定(補完)

□その38
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#380

作成:2018/06/11




「こっちは滞りなく済んだ。夕方までには戻るから」

出張帰りの電車に乗り込んで一息ついてから、土方は屯所の近藤へ電話を入れた。

本来近藤が行くはずだった出張なので、近藤ほど人当たりの良くない自分が代理を全うできるか不安だったのだが、なんとかなって今はホッとしている。

「分かった。ご苦労だったな、今日は」

「ああ。そっちは? 問題ねえか?」

「………」

「……近藤さん?」

「……あのな……トシ、お前……」

「俺?」

「……いや、いいんだ、帰ってからで! うん、とにかくお疲れ! 帰りはゆっくりでいいぞ!」

言われるまでもなく帰りの電車でぐらいのんびりくつろごうと思っていたのに、近藤が意味有り気なことを言って電話を切ったので、それが気になって落ち着かず、同行していた隊士たちを急かして真選組まで戻ってしまった。

「お、お帰り、早かったな」

最短時間で戻ってきた土方に近藤はちょっと動揺しているようで、原因がさっき言いかけたことだとしたらやっぱり気になる。

出張の報告を簡潔に済ませると、土方は本題(?)に入った。

「で? 電話の話だけど、俺がどうしたって?」

「え? ああ、それね……ええと……そのな……」

言い難そうな近藤に、土方はますます不安になる。

長い付き合いなのに近藤が自分に対してこんな遠慮がちなことはほとんどない。

まさか真選組の副長を降ろされるんじゃ、なんて一瞬脳裏を過ぎったがそれは考えすぎだった。

「あのな……お前……万事屋と付き合ってるんだって?」

なんだそれか。

ホッとしたと同時に、全身からドッと汗が吹き出す。

内緒だった。

隠していたのだ。

銀時とそういうことになっていたことは。

「!!! な、なな、なんで……」

突然のことでうまく誤魔化すことができず、モロバレな反応をしてしまった土方に近藤は微妙な笑みを浮かべた。

「あー……総悟から万事屋と仲が良いみたいだ、って聞いてたんだけど……」

やっぱり総悟には隠しきれてなかったようだ。

「それでな、昨日居酒屋で万事屋に会ったんで聞いたらな、そうだ、って言うんでな」

銀時が認めてしまったのなら、もう言い訳は必要なかった。

土方は近藤の前で小さくなってすまなそうな顔をする。

「……だ、黙ってて悪かった……」

「あ? いやいやいや、いいんだ、それは。それに……」

ひょっとしたら怒られたり反対されたりするのかと思ったが、近藤は嬉しそうに笑って言った。

「非番でも屯所で仕事ばっかしてたからな。出かけるようになったり、楽しそうにしてたりするから、誰かいるのかなぁとは思ってたんだ」

「……」

「まあ、相手が万事屋だったのは驚いたけど……うん、トシが楽しいならいいんだ」

嬉しいけれどちょっぴり寂しい、という顔をする近藤に、土方の心臓は鷲づかみだ。

相手が相手だったので報告しにくく隠してしまったが、黙っているのが心苦しかったのですっきりした。

となれば、気になるのはもう一人、銀時のほうだ。

「……近藤さん……悪いが、ちょっと出かけてきてーんだけど」

「お? ああ、銀時に会いに行くのか? 急に出張代わってもらったからな、いいぞ。ゆっくりしてこい」

近藤が笑って送り出してくれたので、土方は銀時に電話で「今から行く」とだけ伝えて万事屋に向かった。


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