原作設定(補完)
□その38
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#378
作成:2018/06/09
某日、某所、某路地裏。
土方十四郎は自分に起こっている事象に、内心で動揺せざるを得なかった。
内心で、なのは、相手が銀時だから。
普段喧嘩ばかりしているせいで、"目を逸らしたら負け"という動物の闘争本能が働いているのだ。
動揺を隠して、自分をじっと見つめている銀時を見つめ返す。
逃げ場所はない。
なにせ裏路地に連れてこられたあと、寄ってくる銀時から後ずさっていたら壁に追い詰められ、両腕で行く手をふさがれてしまった。
『あれ? なんだコレ? もしかして……"壁ドン"とかいうやつ?』
近づいてくる銀時の真っ赤な瞳に吸い込まれそうで、何をさせそうになっているのか分かっているのに動けない。
ただの"憎たらしい喧嘩相手"と思っていないことを、土方も、そして銀時も気付いていたのだろう。
どんどん銀時の顔が近づいてきて、息がかかるころ、ようやく目を閉じることができた。
ぎゅーっと硬く目を閉じて身構えたというのに、それ以上何もないのでそっと目を開けてみる。
ここまで迫っておいて銀時は土方を見つめたままだった。
「?」
「……キスしたい」
「…な、なんで」
改めて問われたら、改めて聞き返してしまった。
「分かんね」
「…わ、分かんねーじゃねーよ……理由もなしに、そんな……」
「だけどすげーしてーんだけど」
「…我慢しろよ」
「無理」
「……だ…ったら、聞くんじゃね……んっ……」
覚悟して目まで閉じてしまった自分が恥ずかしくて、じらされているのが悔しくて、目を逸らしたとき今度こそ強引に唇が重なる。
このやろー、と思いながらも黙ってそれを甘受していたが、いつまでだっても終わらない終わらない終わらない。
こんないつ誰に見つかるかも分からない場所なのに、と抵抗して文句を言ってみたが、
「…も…しつけ…」
「だって、もうこんなチャンスねーし」
そう言って再度キスを繰り返される。
あまりのねちっこさに呆れ、このままでは本当に誰かに見つかってしまうかもしれない、と焦った土方は、つい言ってしまった。
「おいっ、しつけーって…」
「だって…」
「わ、分かったからっ」
銀時が止めてくれないのは"もうこんなチャンスがない"からだし、だったらそれを許可するしかない。
強引な結論だったが、"嫌だから止めろ"とは言いたくないので仕方なかった。
なのに、
「…なにを?」
「…だ、だから……それは……」
百歩譲ってやったのにとぼけられて口ごもる土方に、銀時は小さく笑う。
「それ…また、してもいいってこと?」
「………こ、ここじゃ困るんだよっ……」
真っ赤になってそう言った土方に、今度は本当に嬉しそうに笑って銀時は土方を抱き締めた。
「うん。じゃあ今日はこれで我慢する」
「……」
譲ったんだか譲られたんだか分からないが、銀時が嬉しいならいいかと思って土方はそっと目を閉じた。
が、土方がじっとしているのを良いことに、銀時の手が背中やら尻やらを撫で始めたので、今度こそ本気で抵抗する。
「全然我慢してねぇぇぇ!!離れろぉぉ!!」
「いひひ」
全然反省していない銀時に、ちょっと後悔する土方だった。
おわり
はい、めっちゃイチャイチャしてますね!
もう三年も前のネタだったんですが、
文章つけたから長くなってるけど、ただちゅーしてるだけの話でした。