原作設定(補完)

□その37
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#370

作成:2018/05/08




「よ、万事屋っ……お、おお、お前が好きだっ。俺と付きあってくれっ」

夜遅く、と言ってもいい時間に突然万事屋にやってきた土方は、神楽が留守なのを確認したうえでそんなことを言い出した。

両手をぎゅっと握り締めて緊張した顔をしている。

告白された銀時は、もちろん驚いたものの、それよりも苛立ちを覚えた。

割と土方を気にいってたし、たまにばったり遭遇して酒を飲むのも楽しいと思っていた。

だから告白されたら多少なりとも嬉しいはずなのだが、今は状況が違う。

銀時は先日、真選組のいざこざに巻き込まれ、自分が過去、白夜叉と呼ばれた攘夷志士だったことを白状してしまっていたのだ。

それを土方が知った上での告白。

素直に問い詰めても脅しても、過去のことや、桂、高杉のことを教えてはくれない、と思ったのだろう。

色仕掛けで懐柔しようと考えたのか。

真選組のために。

真面目で硬くて曲がったことが嫌いなくせに、真面目で硬いから真選組を、近藤を守るためになんでする。

土方らしいといえば、すごくらしい。

だけどそれは銀時にとっておもしろくないことでしかなかった。

『ヅラの情報を流す気なんかねーけど、どこまで"フリ"ができるのか付き合ってやるよ』

そんな意地悪なことを考えているのが分かったのか、土方が不安そうな顔をしてやるので、銀時は自嘲気味に笑う。

「いいよ」

「…………な、にが?」

「お付き合い。してーんだろ?」

「ほ、本当に……いいのか?」

「なにソレ。無理だと思ってんのにわざわざ告白したんですか」

図星だったのか、銀時の言葉がまだ信じられないという表情をしているので、その頬に触れ唇を重ねた。

驚いて硬直している土方の身体を抱き締める。

「……ん……」

何度も繰り返す口づけを黙って受け入れていたが、身体を弄られて我に返ったようだ。

「よ、万事屋っ!?」

「何?」

「な、何って……」

「付きあってんだろ? いいじゃん」

「だ、だけど……い、いきなり……」

恥ずかしいというよりも、動揺して怖がっているように見えたので、銀時は優しい声で確認する。

「いや?」

そんな言い方をすれば「嫌」とは言えないと分かっていたし、案の定、土方はぐっと何かを決意したかのように、

「……てめーがしたいなら……」

そう答えた。

銀時はふっと笑って再び土方を抱き締めたら、躊躇いながらも土方も抱き返してくる。

土方が「嫌だ」と言ったら「あ、そう」と答えて、付き合うと言ったこともうやむやにしてやろうと思っていた。

だが、土方は断らず、銀時の抱擁に応えた。

据え膳は喜んで食う性質なので、やることはちゃんとやったし、それなりに楽しんだ。

確実に男に触れられるのは初めての土方が、必死になって耐えている姿は、銀時のドS心を満足させてくれたが、

『そんなに真選組が大事かね』

それを確認させられて、胸の中に苛立ちが残る。

早朝、まだ暗いうちに身支度を整え、寝ている銀時に声もかけずに帰って行った土方。

いつまで頑張るつもりなのか。

いつ本性を見せてくれるのか。

銀時は「ちょっと楽しみ」と意地悪なことを考えながら、神楽が帰ってくるまでもう一眠りするのだった。



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