原作設定(補完)
□その37
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#368
作成:2018/05/05
土方は自室に戻って、ふぅと息をついた。
かすかに酒気の残る自分の息に、小さく笑みを浮かべる。
5月4日、明日は非番で外出予定の自分のために、近藤主催による宴会が開かれた。
ただ宴会を開きたいためのダシだとしても、好きな酒と好きなつまみが並び、マヨネーズ使い放題というのは嬉しいものだ。
明日のことを考えて酒はほどほどのしたので、軽い足取りで布団を敷きもぐり込む。
良い気分のまま眠り、明日は何事もなければ朝から出かけて銀時と遊びに行く。
去年の銀時の誕生日に、プレゼントは何が欲しいかと聞いたら、
「多串くんの誕生日は1日一緒にいたい」
と言われた。
普段なかなか一日の休みがとれず、昼に会ってちょっとプラプラするか、夜に会って酒を飲んでイチャイチャするぐらいしかできていない。
なので、"1日休みを取る"という簡単なようで難しい予定を、ここひと月で頑張って調整した。
もちろんそこまでしても何かあれば休みなんて吹っ飛んでしまうのだが、努力はした。
明日の予定は、行ってからのおたのしみ、と言われている。
万年金欠の銀時のことだし金のかかるようなとこには行かないだろうが、1日一緒にいるんて初めてなので土方も楽しみだった。
ちょっとワクワクながら目を閉じる。
それからしばらくして眠くなりはじめたとき、庭側の障子がばーんと開いた。
「!!?」
「はっぴーばーすでー、多串くん!!!」
土方が驚いて飛び起きると、月明かりを背にそこに仁王立ちしているのは銀時だった。
「な、何してんだ」
「何してんだって、多串くんが何してんですか」
「あ?」
祝いの言葉とは裏腹に、銀時は拗ねた顔で言った。
「今日は休めたって言ったじゃん。なのになんで布団に入ってんの? 寝る気満々なの?」
「……や、休みは取ったぞ。だから朝になったら行こうと……」
「"1日"って言ったでしょうが! 日付が変わった瞬間からが5日ですぅぅぅ!!」
時計を見ると0時を少し過ぎたところで、日付が変わった瞬間に乱入してきたらしい。
確かに「1日一緒にいたい」と言っていたが、そこまでは考えていなかった。
「わ、悪い」
「分かればいいです! じゃあ、どっちにする?」
「ど、どっち?」
「眠いんでしょ? ここで寝る? 俺んちで寝る?」
「…………こ、こここ、ここじゃ、そういうことは……」
土方が急に顔を赤くしてどもるので、銀時は後ろ手に障子を閉めてから、布団の脇にぺたんと座った。
「多串くんのえっち。いくら俺でも、ここでそういうことはしませんよ。でも俺んち行ったら分からないけど」
土方は早合点したのを恥ずかしく思いながら、確かに万事屋に行ったらきっと眠気も覚めていて、そういうことになる可能性が高いと考える。
嫌なわけじゃないが、始めからそんなことをしてしまったら、外出もできずにゴロゴロするだけになってしまうかもしれない。
だったら、何もしないというのならこのままここで眠って、早朝に出かけたほうがゆっくりできるだろう。
土方はちらりと銀時を見てから、聞いてみた。
「……ほ、本当に何もしねーか?」
その顔があまりにも可愛いので『ムリですっ!!』と言って襲いかかってやりたくなったが、せっかく土方が甘える気になってくれたのだ。
ぐっと我慢して、
「しねーよ。ここで寝る?」
そう言ったら、ちょっと悩んでから土方はこくんと頷いた。
それから、自分で言い出したのに同衾にモジモジする土方を布団に突っ込んで、銀時もその隣に寝転んでから土方をぎゅーっと抱き締めてやる。
もうこの季節になると人の体温は暑いなぁ、と思う土方と、我慢我慢我慢我慢我慢と念じ続ける銀時は、幸せな気分で土方の誕生日をスタートさせるのだった。
はぴば、土方さん!
おわり
……というネタを、日付が変わると同時にUPできたら
良かったのにねぇ……という話(笑)
仕方ない、思いついたのが昼ごろだったので。
本当はもっとイチャイチャまで書こうかと思ったのですが、
できないことをムリしちゃダメよね。うん。
ともかく、今年も土方さんの誕生日をお祝いできて良かったです。