原作設定(補完)

□その37
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#363

作成:2018/04/02




春になってようやく咲いた桜もあっという間に散ってしまったある日の夕方。

玄関の呼び鈴が連続で鳴り、何事かと思っている間に玄関の扉が開いてドタドタと誰かが入ってきた。

夕食の途中だったのでソファに座った銀時と神楽、今日はまだ残っていた新八が立ち上がりかけた状態で見つめる中、扉から飛び込んできたのは土方だった。

「土方さん?」

土方が銀時と付き合っているのは周知の事実だったが、こんな風に突然やってきたことはなかったし、しかも様子がおかしい。

顔は真っ赤で足取りはふらふら、だけど怖い顔をして銀時を見つけて叫んだ。

「銀時っ!!」

「は、はい…」

びっくりしてる三人を他所に土方はさらに中に入ってくる。

そして名前で呼ばれるなんて初めてでドキドキしている銀時の前まできて、おもむろにぎゅーっと抱き付き、

「てめー、なんで昨日の夜、おやすみの電話くれなかったんだよっ。俺のこともう好きじゃねーのか?」

拗ねるような声でそう言って擦り寄るように銀時にくっついてしまった。

「!?」

『えええっ、銀さん毎日そんなことを!?』という顔をしている新八たちに、銀時は困惑したように釈明する。

「ないないないない、んなことしたことねーからっ!……つーか、酒くさっ」

「え? 酔っ払ってるんですか?」

新八が横から覗き込んでみたら、満足そうな顔ですやすやと眠っていた。

土方のこんな姿なんて見たことがないので、どうしようかと思っていたら、どこかで携帯の着信音が鳴り出す。

携帯を持っているのは土方しかいないので、銀時はもぞもぞと音を頼りに携帯を取り出してみた。

相手は山崎だったので銀時は通話ボタンを押して、変わりに電話に出てやった。

「はい」

『副長―っ? 今どこですかっ』

「万事屋だけど」

『あれ? もしかして旦那ですか? 副長そこにいるんですか』

「泥酔の副長なら一人寝てる」

『局長〜、副長、万事屋の旦那のところでしたっ』

山崎の声が遠くなったと思ったら、電話の向こうの騒がしい声がよく聞えるようになった。

それからすぐにもっとうるさい声が電話に出た。

『だはははっ、万事屋かっ』

「……なに、お前ら、昼間から飲んでたの」

『花見だよっ』

「花見ぃ? 桜なんかもう散ってんだろう」

『しょうがないだろ〜。忙しくてできなかったんだから。あ、トシな、そのまま置いといてくれや。明日の朝には自力で帰れるだろ』

今年は仕事が忙しいからと毎年恒例になりつつあった花見で遭遇もなかったのだが、どうやら遅ればせながら宴会だけでも行ったらしい。

気持ち良さそうな寝顔の目元にはクマが浮かんでいて、このままぐっすり眠らせてやりたい気持ちになった。

「分かったよ」

そう答えて電話切る。

「土方さん、泊まってくんですか?」

「そうなるな」

「じゃあ、私、新八と一緒に帰ったほうがいいアルか?」

「気ぃ回すな。こんな熟睡してるやつに何もしねーよ」

子供相手だが、神楽を新八の家に泊まらせに行かせるたびに土方が来ていたことはバレているので、誤魔化すのも今更なので変な言い訳はしない。

じゃあ、という感じに新八が和室に土方の分の布団を敷いてくれた。
神楽が手を貸してくれたので土方を軽々と部屋に運び、布団に突っ込んでから改めてその寝顔を見る。

会えるのは久しぶりだというのに、"オアズケ"なのはなかなか切ないものだった。


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