原作設定(補完)

□その36
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副長室に入ってようやく落ち着いた気分になった銀時は、土方が食堂から貰ってきてくれた飯にかぶりつく。

飯の上に残り物の魚をほぐしたものを贅沢に盛った見た目はとても美味しそうだったが、一口頬張って銀時は顔をしかめた。

味が薄い。

飯を食べる銀時を見ながら土方が言った。

「塩分抜いて貰ったからな、安心してたらふく食え」

それから懐から携帯用マヨを取り出して、

「マヨネーズの塩分も猫には悪いらしいし……うめーのにな……」

まだ未練がありそうにそう呟く。

どうやら銀時が言ったことを土方なりに調べてくれたらしく、そんな素直なところが可愛いなと思いつつ、味気ない飯をガツガツと食べてやった。

それから、飯は食べたのだから追い出されてもおかしくないのに、土方は銀時をそのまま部屋に置いて仕事を始める。

部屋から出るなと言われたので、銀時はウロウロと土方の部屋を見てまわった。

煙草とマヨの匂いがしみついているが割と綺麗に片付けられていて、座布団の上に座っていたらうとうととしてしまったらしい。

声が聞えて目を開けると、土方が携帯を手に話をしていた。

「……そうか、分かった……何度もすまねーな……朝にもう一度かける……ああ、頼む」

何やら神妙そうな様子だったが、電話を切ったあとにぽつりと呟いた言葉で、銀時の胸はちくりと痛んだ。

「……なにやってんだ……腐れ天パー……」

顔をしかめていても目は不安そうに翳っている。

どうやら電話の相手は新八か神楽のようで、銀時が戻っているかどうかを確認したのだろう。

何かあれば新八から電話をしてもらえば早いのだが、いつどんな仕事をしているか分からないのでそれもできない。

だけどプライベートの電話を屯所で受け取るのも気恥ずかしくて、土方はもどかしく思いながら何度も電話をかけていた。

「多串くん! 俺はここにいるってば! 猫になっちゃってるけど銀さんですよ!」

たまらず銀時はそう叫んでしまうが、当然ニャーニャーと騒いだだけで通じはしない。

だが突然騒ぎ出した猫に、土方は小さく笑って頭を撫でた。

「どうした?」

銀時の頭をこっそり撫でているときも、そんな優しげな顔をしていたのだろうか。

自分ばかり土方のことを想っているような気がして、土方の想いを確認しないでしまったことを後悔する。

頭を撫でる手に擦り寄っていたら、土方が時計を見て言った。

「……もう寝るか……今日は泊まっていっていいぞ」

もう夜中だったようで、土方は布団を敷くとその中に銀時をご招待してくれた。

鬼の副長と呼ばれている男が動物に優しいなんてありがちなギャップ萌えに、銀時の胸はきゅんきゅんしっぱなしだ。

土方の懐に抱かれて眠るなんて照れくさくて仕方ないが、猫の体質が故か、暖かいし寝心地も良くて銀時はすぐ眠ってしまう。

それを見ながら土方も目を閉じた。




空気がひやりとしていたので朝方だったと思う。

なんだか寝苦しくて土方が目を開けると、目の前に白いもふもふが広がっている。

野良猫を抱いて寝たのは覚えているが違和感を感じて、

『あれ? あの猫、こんなに大きかったか?』

そう思っていたら、体を何かにぎゅーっと抱き締められた。

ようやくはっきり目が覚めて、よくよく見たらその白いもふもふには口をだらしなく開けた寝顔が付いている。

幸せそうに眠る銀時がなぜここに居るのか、土方は近藤の話を思い出して察した。

『……猫になったって、やっぱり本当だったんじゃねーか……とぼけやがって……』

腹も立ったが、それ以上に安心している自分がいる。

銀時だとも知らずに、猫を相手にさんざん心配している様子を見せてしまったのだ。

銀時が自分を想っているのと同じぐらい、自分も銀時を想っているとバレのが恥ずかしくて素っ気無いフリをしてきたが、もうそれも必要ない。

怒るのも許すのも甘えるのも起きてからすることにして、土方はもう一度"銀時"を抱き締めて目を閉じるのだった。


 おわり



あれぇ? なんかしんみりと終わったな(笑)
もっとギャグっぽくするはずだったんだけど……なんでだろう。
猫の銀さん、めっさ可愛いよね……ホウイチ篇が好きだなぁ。
最後は一応イチャイチャしたよね、うん(笑)

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