原作設定(補完)
□その36
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#360
作成:2018/03/29
市中見回り中の真選組副長は、怪しい攘夷志士よりも、いつのまにか居なくなっていた一番隊隊長を探してキョロキョロしていた。
毎度毎度逃げる沖田にも、毎度毎度逃げられる自分にも腹が立っていて怖い顔をしていたのか、守るべく市民のみなさんが怯えたり怪訝そうな目で見たりするので、土方は小さく溜め息をついてから裏路地へ入った。
仕事が忙しいと精神的にギスギスしてしまっていけない。
今日はもう沖田を探すのを諦めて、かぶき町の裏路地をのんびり歩いてみようかという気持ちになった。
もちろん本来の目的を忘れてはいないが、今日は天気も良いので心身が和んでいく。
暖かな春の日差し、遠くから聞えてくる子供たちのはしゃぐ声、平和な日常。
このために頑張って働いてるんだなぁという気持ち…で歩いてたが、
「兄ちゃん、ずりーよー」
「ずるくないですぅぅぅ、世の中そんなに甘くねーからな。そんじゃ、次いくぞ」
と子供たちの声に混じって聞き覚えのある声が聞えてきた。
その声に少し心が浮き立つ。
沖田に逃げられたのも悪いことじゃなかったな、と思いながら声のするほうに行ってみると、見覚えのあるもふもふの銀髪としゃがんだ広い背中、その前に並ぶ子供達が居た。
地面に何かを広げているようで、何してんだ?と様子を伺っていると、
「丁か半か、さあ張った張った!!」
「丁!」
「俺は半!」
真剣な声でそう叫ぶ子供たち。
手元は見えなくても何をしているのかが分かった。
子供相手に賭け事をしている銀時に、浮き立った気持ちが一瞬で消えて、代わりに怒りが込み上げてくる。
ずかずかと銀時の元まで歩いていくと、
「出揃いやしたね。ではっ、いざしょー…」
気付かない銀時の背後から、がしっと頭部を掴んでギリギリと締め上げてやった。。
「何をやってるんだ、てめーはぁぁぁぁ!!」
「いだっ! え? 多串くん!? 痛い! ギブギブ!!」
手を離しても頭を抱えて悶絶している銀時に、急に現われて"乱暴を働いた"ように見える土方を子供たちが怯えた目で見上げている。
どうやら真選組の隊服を着ているのも影響しているようで、そんな目で見られるとちょっと切なくなる土方だった。
が、気を取り直した銀時が久し振りに会えことを嬉しがって話かけてくるので、すぐにその場の空気が落ち着く。
「多串くん、どしたの? お休み……じゃねーな。あ、見回り? ごくろーさまです」
「……お、おう」
「でもさ、ちょっと休憩してかない? せっかくだから多串くんも一緒に遊ぼうぜ。堅苦しい制服なんて脱いでさぁ」
素早く立ち上がって隊服を脱がせようとするので慌てて抵抗するが、
「おいっ、まだ仕事…」
「どうせ沖田君に逃げられてぷらぷらしてた、とかそんなとこでしょ」
と見破られた。
隊服を脱がされるのはなんとか阻止したが、そのまま逃げることができず、まあまあと促されて銀時の横に座らされた。
銀時がニコニコしているせいか、子供たちも土方に危険がないと分かったのか、もう怯えた顔はしていない。
なので土方のほうも、まあいいか、という気分になってしまった。
地面を見ると、広げた新聞紙の上に駄菓子屋で売っている"小銭の形をしたチョコ(パッケージ付き)"がたくさん積まれていて、どうやらそれが"賭け金"のつもりらしい。
「はい、これあげるから、遊んでいってね、お兄さん」
そう言って銀時が自分のところに置いてあったチョコを10枚ぐらい土方にくれた。
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