原作設定(補完)
□その36
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案の定、新八は気まずそうな恥ずかしそうな顔をし、神楽は銀時を呆れた顔で見つめ、銀時は納得したように小さくため息をつく。
一昨日の夜は久しぶりのデートだったので盛り上がってしまい、アレをしないでソレしてナニしてしまい、そのあと疲れてそのまま眠ってしまった。
組からの緊急連絡で起こされ、後始末もできずにシャワーだけ浴びて屯所に戻った……のが原因だった。
つまりは責任の一端は銀時にもあるわけで。
「……だから結婚、ね……」
銀時の呟きを聞いて土方の胸が痛んだ。
呆れたのか、怒ったのか。
こんなことがなければ結婚なんて考えもしないはずなのだから、自分のトラブルに銀時を巻き込もうとしてしまっているのは確かだった。
それでもこの銀時に似た子供を、産まれてしまったからにはちゃんと育ててやりたくて、それを銀時に内緒にするわけにはいかないと思ったのだ。
土方がしょんぼりしているのを見て、銀時はひとまず質問してみる。
「つーか、それ、なんでそんなに大きいんだ? 普通赤ん坊が産まれるんじゃねーの?」
「……本来はそうらしいんだけど、地球人の体質に合わないのか、俺が男だったからなのか、こうなっちまった、らしい」
「ふーん」
「でもまだまだ可愛いアルヨ! ねー、銀楽ぅ」
「万時、おいで、万時」
勘七郎を思い出して嬉しくなったのか、新八と神楽が楽しそうに話かけるので、土方の後ろに隠れていた小さい銀時も恥ずかしそうに顔を出す。
クローンであって自分じゃないと分かっていても、なにかこそばゆい気持ちになる銀時だった。
「土方、こっち」
三人がキャッキャと楽しそうにしているので、銀時は土方を隣の和室へ連れて行く。
プロポーズしても小さい銀時を見せても銀時が喜んでいないところを見ると、良い話じゃなさそうだと土方の表情も暗い。
ポリポリと頭を掻いてから銀時は言った。
「アイツが、ようするに俺のクローンだってことなら……俺が引き取ってもいいよ」
「……引き取る、ってなんだ……」
「……"そのため"に結婚する必要はねーだろ、って」
土方は掌を強く握り締める。
銀時が言うように、こんなことがなかったら結婚しようなんて考えるはずもなかった。
だけどこうなってしまったからには一緒に育てて欲しくて、一晩考えに考えてプロポーズまでしたのに、拒絶されたような気分になった。
土方が傷付いた顔をするので、銀時は深い溜め息を一つついてから説明する。
「俺はさ、あいつ育てるならちゃんと家族にならねーとダメだと思うわけ」
「……だから結婚しようって……」
「うん。結婚するからにはやっぱり一緒に暮らしたいなぁと思うんだけど、お前の仕事柄、それってけっこう大変じゃね?」
それを言われると土方には反論のしようがない。
仕事も休みも不規則で、昼だろうが夜だろうがデートの途中で呼び戻されたのも少なくないし、満足に"付き合ってる"っぽいこともできていないのに結婚なんて、とも思う。
銀時だってそう思っているからこそこんなことを言い出したのだろうし、それは土方のことを思ってだということも分かっている。
「俺が屯所で暮らすわけにもいかねーから、こっちに来てもらわねーといけないし、それじゃちゃんと休めないだろ。仕事の邪魔はしたくねーし……暇ができたときでも会いにくれば……」
銀時が土方を気遣って説得しようとしているのに、土方の気持ちはどんどん脱線していった。
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