原作設定(補完)

□その36
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翌日の午前中、土方が万事屋に姿を見せた。

こんな時間に土方がやってくるのは珍しいが、私服姿なので新八と神楽はぱーっと明るい顔で出迎える。

「土方さん、いらっしゃい」

「マヨラ! 土産は!? 土産はないアルか?」

「ん」

差し出した神楽の手に渡されたのは、ずっしりの食材と、たくさんの酢昆布が入ったレジ袋だった。

それを受け取ってはしゃぐ神楽に、

「キャホォォォォウ!」

「神楽ちゃん! その前に言うことと、後に言うことがあるでしょう!」

「ちっ。いらっしゃいアル! ありがとうネ!」

新八に躾けられて、神楽はちゃんと挨拶と礼を言ってから荷物を持って奥へ走って行った。

それを新八が追い、入れ違いに銀時が玄関まで出て来る。

「どした? こんな時間に」

「……話がある……」

「……出る?」

「……ここで、いい」

「そ。じゃあ、どうぞ」

様子のおかしい土方に銀時なりに気をつかってみたのだが、新八と神楽に聞かれてもかまわない話、というだけでちょっと安心して銀時は先に中に戻って行く。

その背中を見ながら土方は深く深呼吸をした。

子供たちに聞かせるには多少生々しい話になるのだが、どうせ係わり合いになるのだから隠しても仕方ない。
奥の部屋に入ると、神楽は早速酢昆布
を開けて食べているし、新八がお茶を入れてくれている。

銀時と土方が付き合ってることを知っている二人だったので、土方の突然の訪問にもいつもどおりだった。

「で? 何?」

が、ソファのいつもの場所に座った土方が真剣な顔をしていて、銀時がそれにちゃんと向き合っているのを見て只ならぬ様子だと感じたらしい。

新八に心配そうに見守られながら、何度か躊躇った後に土方は言った。

「……万事屋……俺と、結婚してくれ」

「ええええ!?」

突然の土方からの求婚に、驚いて声を上げたのは新八で、酢昆布とテレビに夢中だった神楽はちらっと顔をこちらに向けた程度だったし、プロポーズされた当の銀時はしれっと、す

「いいよ」

そう答えたものだから、新八が再度驚く。

「ええええええ!? ちょっ、銀さん、結婚って日本の法律じゃ無理です!」

「あー、つまりは“一生添い遂げると誓いますか”、だろ。もともとそのつもりだったしな」

「ひゅー、ひゅー。銀ちゃん、男らしいアル」

「銀さんがそんなに真面目に土方さんとのことを考えていたなんて。分かりました!僕たちはお二人を祝福します!!」

土方の予想に反して、新八と神楽はなぜかノリノリで、むしろ銀時のほうが落ち着いていた。

銀時が言ってくれたことは嬉しかったのだが、もっとテンション高く喜んでくれるか、困った顔をされるのかのどちらかだと思ったので土方としては複雑だった。

土方がそんなことを考えてるんじゃないかなぁ、というのまで見破って銀時は内心で息をつく。

銀時が落ち着いているのは、土方が落ち着いているから。

二人が付き合うことになったのは、土方のほうから告白されて、だった。

勢いをつけたかったのか素面では言えなかったのか、酒を飲んで赤くなった顔を、更に真っ赤に染めて告白してくれた。

そんなところが可愛いと思ったのに、今日の土方はプロポーズなんてしてる割に照れもしない。

冗談でこんなことを言うとは思えないが、何か裏があるんじゃないかと思えた。

「というか、何で急にそんな話になんの? なんかあった?」

「……こ……子供が出来た……」

「ええええええええ!?」

声を上げたのはもちろん新八だったが、冷静にしていた銀時もさすがに驚いた。

ついつい、

「……誰の?」

なんて言ってしまったが、女の恋人に対しての言葉だったらぶっとばされても仕方ない暴言だが、男の土方なので無理もない。

土方は懐から携帯を取り出し誰かに電話をかけ、

「…中に入れろ…」

とだけ言って電話を切った。

どうやら玄関で誰か待機していたらしく、扉が開いて小声で何か指示する声が聞こえる。

そして軽い足音が近づいてきて、開いたままの部屋の扉から、銀時によく似た小さい子供が顔を出した。

「!!?」

「ええええええええええ!?」

「銀ちゃんにそっくりアル!」

見知らぬ三人が自分に注目してるのが怖かったのか、小さい銀時は驚いたあと、土方の後ろにぴゅーっと隠れてしまった。

「な、ななな、なんですすか、それ! 土方さん!?」

「銀ちゃん! ちっちゃい銀ちゃん見せるアル!」

興奮気味な二人に事情を一切合切話すのは気が引けるが、上手く誤魔化されてくれそうにないので土方は正直に話すことにした。


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