原作設定(補完)

□その36
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「なんで土方くんがあいつらの心配すんの?」

「あ?」

「アイツラが腹空かせてたって土方くんには関係ないよね?」

自分でも思っていたことだけに、土方はそう言われて先ほどまでの勢いが消されてしまう。

「……は、腹空かせたガキが居たら誰だって心配ぐらいするだろーが……」

「もっと小さい子なら分かるけどさ、アイツラお前らのトラブルに協力できるぐらい大人よ?」

「……それはそうだけど……」

「それに見回りしてたらこんなご時勢だし腹空かせたガキなんてよく見るだろ? そいつらにも奢ってやろうとするわけ? 土方くんらしくなくね?」

いちいちご尤もなことを言ってくる銀時に、土方は言い訳になる理由を探す。

今までの土方なら空腹の新八たちだって放っておいたし、なにかあの二人に親しみを覚えるような出来事があったわけでもない。

強いて変わったことを上げれば、銀時と寝ていること。

ただソレだけで、一緒に酒を飲んだこともないし、昼間に会っても相変わらず口喧嘩で終わることが多い。

だけどソレのせいで銀時を身近に感じてしまうのも仕方なくないだろうか。

「……それはてめーが……」

「俺? ……ああ、俺と寝てるから? でもそれだけだよね? 新八たちを心配するほど仲良しになったわけじゃないと思うけど」

銀時のあっさりしたその言葉に、土方の胸がチクリと痛んだ。

確かに金を払っているのだから"それだけ"と言い切ることはできる。

だが三ヶ月の間に両手で余るぐらい肌を重ね、その間銀時は優しすぎるぐらい優しくて、土方はその理由を金のせいにするのに必死だった。

何か特別な理由があるんじゃないかと期待しないように、自分に言い聞かせた。

なのにそんな風に言われてしまった、本当に"金のためだけ"なのだと言われている気がして。

土方が眉間にシワを寄せて口を結んだのを見て、銀時は土方の心を見抜くようなことを言った。

「……俺のこと、気になる?」

違う、と言いそうになるのを土方は飲み込む。

言ってしまったら、自分の気持ちを全部否定しまうことになる。

その素直じゃない姿を確認してから、銀時は小さく溜め息をつき、

「ちょっと待ってて」

そう言って奥の部屋に行き、折り返し戻ってきて封筒を土方に投げて寄越した。

慌てて受け取ったそれは分厚く封筒にしては重く、土方はなんだ?と思いながら中を覗いてみると、びっしりとお札が入っている。

「? なんだ?」

「土方くんから貰った金」

「!?」

改めてて封筒を見た土方は、枚数的にこれがおそらく土方が払った金の全部で、銀時が貧乏だった理由を知った。

金を要求したのは銀時のほうなのに、その金には一切手をつけていなかったようだ。

「なんで……」

「……土方くんが金で解決したほうが気が楽かと思ったんだよ」

「……だから、なんで」

「……ぐっ……そ、それは……」

さっきまで土方を追い詰める言葉を並べ立てたくせに急に歯切れが悪くなって、じーっと見つめられているのが耐えられなくなったのか銀時は顔を真っ赤にしてから白状した。

「……す…す、すす……」

「す?」

「す、好きなヤツを金で買えるほど、銀さん擦れた男じゃないんですぅぅぅ」

割と早いうちから土方を好きな自分に気付いた。

だけどそれを表に出す気もなく、誰にも知られないよう、自分さえも騙すようにしてきたのに、あの日、そのことを思い出してしまった。

土方を助けるためには性欲と思わせて誤魔化すのが早いけれど、その相手を他の誰に任せるのが嫌だと、今ならなんとか言い包めて自分がその役になれるんじゃないかと。

いつまでも土方が金の関係だと割り切ってくれたら、銀時も金の関係だと誤魔化せた。

なのに自分に興味があるような素振りを見せるから、もうたまらなくなって白状してしまった銀時だった。

真っ赤になってる銀時の告白を聞いて、土方の胸がほっこりとする。

嬉しいとか自分も同じ気持ちだとか、そこまではまだ思えないけれど、それでも銀時の気持ちにほっとしている自分がいる。

土方は手の中の封筒をぎゅっと握り締めて言った。

「……分かった、もう金は払わねー。だけど、止めねーから」

「……え?……」

「今更他を探すのも面倒なんだよ。だから今までどおり、電話したらすぐ出てきやがれ」

銀時の気持ちを無視した物言いに思えたが、そう言っている土方の顔も真っ赤だったのでどうもそうじゃないらしい。

知った上でまだ関係を続けてくれようとする土方に、銀時はふにゃりと笑って、

「土方くん、可愛いぃぃぃ」

たまらず手を伸ばして抱き締めた。

「だ、だだ、誰が可愛いだとコラァ!!」

腕の中でそう叫びながらも逃げようとしない土方を、『やっぱり可愛いじゃん』と思いながら満足する銀時と、『始めから俺が好きだとか可愛いのはてめーだろ』と思いながら拗ねる土方だった。


 おわり



シリアス気味に広げた割には、いつもの展開で終わりました。
仕方ありません、数年前のメモでそう設定していたので。
つまり何年も成長していないということですね(笑)

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