原作設定(補完)

□その36
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それから数日、土方の調子はすこぶる良かった。

ずっと身体がだるいというか重いというか、頭が冴えないというかぼんやりするというか。

仕事が忙しいのはいつものことだったが、出動した後、特に斬り合いがあった後など記憶が曖昧になることもあって、体のどこかが悪いのかと不安だった。

それがあの日、よりにもよって銀時にとんでもないところを見られたあと、とんでもない提案をされて、とんでもない関係になった日から、絶好調なのだ。

『マジでアイツの言うとおり……よ、欲求不満とかだったのか? それであんな風になっちまうのか?』

近藤にも山崎にも相談できず、こっそり病院に行ってこようかと思っていたのだが、行かなくて良かった。

あの日の記憶は朝から曖昧で、はっきりしてるのは前日からのテロ制圧の出動から戻ったのと、その次には目の前に銀時がいた。

容赦なく切り刻まれた浪人風の男たち。

銀時に付いて行ってあの場をそのままにして離れたが、凄惨な現場だけにすぐに発見されて真選組で調査することになった。

自分がやったとは言い出せずに報告を受け、手配中の過激攘夷志士だったことと、無抵抗の相手に刀を振るったわけではなくそれなりに乱闘の後があったとことを聞き、少しだけ安堵する。

ただますます近藤には報告できなくなってしまった。

あれだけのことをしたのにまったく覚えていないなんて、どれだけ心配をかけることか。

『……だけど、まあ……欲求不満だったってなら、変な気分になったら吉原にでも行けばいいんだろ』

対処方法が分かっただけでも御の字だった。

それが銀時からの提案だったことが気に入らないが。

なんて考えていたら、あの日のアノことを思い出し、土方は急いで煙草に火を点けて何度も吸い込む。

あの時はわけも分からず一杯一杯だったので銀時の言いなりになってしまったが、冷静になって考えると恥ずかしいだけだった。

この数日間、体は好調だったが銀時のことを思い出しては悶絶し、ばったり会うのが怖くて外にも出れていない。

銀時のふざけた口調はいつもと同じなのに、始終優しかったことは意外だった。

ホテルに着くなり隊服を脱がされて風呂場に放り込まれ、事が終わって再度風呂に入って出てきたら、血まみれの隊服は綺麗になっていた。

「どうしたんだ」と訊ねたら、近くにあるクリーニング店で強引に対応してもらったらしい。

真選組の隊服なんてモロバレなものを不用意に外に出してしまったが、きっと銀時のことだから口止めなりなんなりしてくれただろう、という気がして文句は言わなかった。

なので、アレもコレも結果的には助けてくれたことになるのだが、相手が相手だけに素直になりにくい。

金を払ったことで多少は割り切ることにしたものの、銀時の本心が何なのか、そんなものがあるのか、気になった。

『…………"また"って言ってたけど……本気か?』

あの時は本当にそんな気はさらさらなかったのだが、気になって悩み続けるぐらいなら会ってみるのもいいかもしれない。

そんなことを考えるようになる土方だった。



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