原作設定(補完)
□その36
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#359
作成:2018/03/28
土方十四郎は憮然としていた。
目の前には坂田銀時、場所は派手な外観のホテルの中の派手なベッドの上。
そういうことを目的としたホテルなのだから、そういうことをしに来たつもりなのだが、なぜか銀時はモジモジソワソワと煮え切らない態度だった。
そもそもここに来たのだって、酔うたびに銀時が「多串くーん、ヤろうよー、いいじゃん、ちょっとぐらい、ねーねー」的なことを言うので、最初は当然拒否してきた土方も面倒になってきて「分かった」と了承したためだ。
それなのにホテルに着いてみればこの状態。
イラついて土方のほうから詰め寄ってしまった。
「おい」
「……はい……」
「ヤらねーのか」
「……えっと……」
その態度に土方は気付く。
「もしかして今までのはずっと冗談だったのか?」
「……それは……」
いくら毎回しつこかったからといって、酔った人間の言うことに乗ってしまった自分が悪かったと思い、帰ろうとした土方を、
「……だったら真に受けたりして悪かったな。もう帰……」
「違います! ヤリたいです!!」
銀時が慌てて必死な様子で止めた。
どうやら酔った上の冗談ではなかったようだ。
「……じゃあ、なんだよ……」
「……そ、そのう……」
「帰るぞ」
「だって……まさかOKされるとは思ってなくてですね……」
「あ? やっぱりその気じゃねーなら……」
「全然バリバリものごっさその気ですぅぅぅ!」
「じゃあ、なんだよ」
「……俺はね、ずーっとその気だったんですけどね、まさか土方くんがノッてくれると思ってなくてですね……ダメモトだったというか、だから誘えてたというか……」
モジモジしだす銀時に、土方は察する。
「まさか童て……」
「違うわぁぁぁ!!」
「初めてで緊張してるんじゃねーのか」
「いや、男は初めてだけど、つまり、好きになった相手としたことがねーだけで」
「素人童貞というやつか」
「それもねーけど……」
「?」
「いや、ほら、行きずりでその気になってとかー、良い気分で酔った勢いでーとかー……あるじゃん、男の子だもの」
"男だから"で決め付けられると心外だった。
「……俺はねー」
「ええぇ!? おめーならいくらでも声掛けられるし、逆に声掛けられたりして相手に困らなそーじゃん」
「んな得体の知れない相手とできるか」
「あー、まぁ、おめーはそうかもしれねーな」
納得する銀時に、土方の胸はもやもやしたままだ。
モテなそうな男だと思っていたがそれなりに遊んでいるんだと思うと、なんだかムカついてしまった。
『だったら別に俺なんかとヤらなくてもいいだろうが。好いてくれてる女と適当に……』
イラつきながらそんなことを考えていたら、何気無く聞き流した銀時の言葉のあるフレーズが頭を過ぎる。
「……"好きになった相手としたことがねー"から緊張してる?」
「そうです、何度も言わないでくださぃぃぃ」
「……てめー、俺が好きなのか?」
「え? な、なにが? ヤってみてーって言ってるだけで、別にそんなことは……」
「俺とすんのが緊張すんだろ? 好きだからなのか?」
「そ、それは……」
そんなことはないと誤魔化したかったらしいのだが、土方相手に誤魔化せないと気付いたのか、観念したのか、銀時の顔が真っ赤に染まった。
なんだ、だから酔っ払いのたわ言にしてはしつこかったのか、と土方は納得する。
酔っ払いの言うことにドキドキして、でも酔っ払いの言うことだから本気なのか分からなくて、悩まされてしまったことに小声で文句を言った。
「……もっと早く言えよ、ばーか」
「え?」
「白状して楽になったろ。じゃあヤルぞ!」
「は、はいっ!」
色っぽさにかける始まりだったが、二人とも内心は天にも昇る気持ちだったのでした。
おわり
セリフばっかりになっちゃったな……ま、ラブホで向かい合わせで会話してるだけだしね。
イチャイチャ前なのに色気がなくてすみません。
銀さんはそれなりに遊んでるけど、土方さんは割とお堅くて素人童貞だったらいいな、という話……か?(笑)