原作設定(補完)

□その36
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#358

作成:2018/03/26




"私のどこが好き?"

"君の全てが大好きさ"

"……なんて言ってた彼が浮気をしていたなんて……"

"昼ドラ、実話再現、私はこうして全てを失った"


「そんないい加減な男の言うことを信じるからでぃ」

昼休み、食堂のテレビに流れている番組予告を見て、食事を終えて茶を飲んでいた沖田がぼやく。

やけに自信満々の言い方の若い隊長に、だいぶ年上で人生経験が多いはずの山崎が問いかけた。

「いい加減、ですか?」

「全部、なんてあるわけねーだろぃ。そんなパーフェクトな女なんているわけねーや」

「そうですかねぇ」

「女なんて、金のことか、男のことか、見得のために生きてるもんでぃ。その性根の悪さがどっかに滲み出でりゃ、どっか欠点にならぁ」

「……沖田隊長……何か女でひどい目にあったことがあるんですか?」

「……一般論でぃ」

若くてもモテモテな男にはなにか苦労があるのかもしれない。

山崎には分からない苦労だったので、もう一人のモテモテ男にも聞いてみよとして躊躇する。

もう一人のモテモテ男はご飯茶碗をじっと見つめ、眉間に深いシワを寄せていたからだ。

「……副長? 飯になにかあったんで?」

「……な、なんでもねー」

「そうですか。副長はどう思います?」

「何がだ」

「今のテレビですよ。"全てが好きだ"って言えるような女って居ないもんですかねー?」

そう問われて土方は茶碗を持つ手に力を込めた。

ずっとぼんやりしていたわけではなく、眉間のシワの原因もそのテレビで言っていたことだった。

『てめーは俺のどこが好きなんだ』

『全部に決まってんじゃん』

付き合っている男がいつでもそう答えることを思い出し、嫌な予感がして不安と苛立ちを覚えていたからだ。

自分が面倒くさいことを聞いたのは分かっているが、本当に自分のどこが良くて付き合っているのか分からず、ついつい聞いてしまう。

それに対して笑顔でそう答えてくれるのを嬉しいと思っていた、

だけど沖田の言うように、適当で面倒なだけでそう言っていたのだとしたら。

思えばその男の周りにもいつでも女が親しげに戯れていて、浮気の兆候だって見え隠れしている。

ますます不安になる土方は、山崎の言葉が自分のことに対しての質問に聞えた。

「……居るわけねーだろ」

「でも、相手の男にしたら欠点も良く見えるから、全部ってこともあるんじゃないですかね」

「口だけでぃ。欠点が良く見えるなら、浮気なんてするわけねーや」

ちゃんとした男女交際もなさそう…というか興味もないだろう沖田にそう言われて、そんなもんかなぁと山崎は納得する。

山崎は納得しても土方のほうにはもやもやが残ったままで、午後から夕方まで時間が空いたというのに部屋で煙草をふかすだけ。

いつもだったら電話して、割といつも暇にしている恋人とお茶なり食事なりするのだが、そんな気分になれないでいた。

本当はどうなのかちゃんと聞いてみたい。

でもきっといつものように笑顔で同じことを答えるに違いないし、あの口から産まれたような男をうまく言い包められる自信もない。

だがこうして土方がモヤモヤしているのも知らずに、もしかして誰かといちゃついているかもしれないと思ったら、たまらず部屋を飛び出していた。

暇だったら家にいるか、いつもの団子屋でダラダラしてるはずだ。

団子屋に向かいながら、どうすれば本音を聞きだせるのかを考える土方だった。


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