原作設定(補完)
□その36
20ページ/31ページ
#357
作成:2018/03/19
「マズイ!時間がない!」
「近藤さん!一旦退避……」
同時に爆発音が響き、部屋はあっという間に真っ白な煙に飲み込まれた。
その様子をモニターで見ていた面々があーあという顔をする。
「爆発しましたね」
「……しちゃいましたね」
呑気な声でそう言ったのは、ビルの管理者と真選組の山崎だった。
今朝このビルに爆発予告があったと出動した真選組だったが、呑気なのは爆発自体に殺傷能力があるものではないと知っていたから。
テロ行為かと真選組が出動してみたのだが、よくよく事情を聞いてみたらこのビルを保有している企業をクビになった元社員による腹いせ行動だった。
同ビルから盗み出した爆発物は発火、延焼の危険はないと分かっていたのだが、薬品を多く扱うビルということで回収を試みた。
のだが、手がかりがなさすぎて失敗してしまった、というわけだ。
「爆発したのはどの部屋ですかね」
「えっと……今の声の様子だと近藤局長が居たところみたいなんですが……」
真選組隊士が一斉に広いビルを捜索していたが、どうやら爆発物があったのは近藤と土方が居た部屋だったらしい。
「えー、局長―、副長―、大丈夫ですか?」
"ゴホッ、だ、大丈夫だぁ……"
「無事でなによりです。で、今どこの部屋にいらっしゃったんですか?」
"ゴホッゴホッ……え?あれ?どこだっけ?……"
"7階の704号室だ。ゴホッ"
"そうそう、そこだ"
報告を受けて社員が手元の資料を見て眉間にシワを寄せる。
「704号室……あ、マズイですよ、その部屋は……」
「な、何か劇薬でも保管されていたんですか!?」
「真選組に女の人はいらっしゃいますか?」
「え? いや、隊士はみんな男ですが……」
「ああ、なら大丈夫です。こちらの女の社員もすべて避難しているので」
「……それはどんな薬品なんですか?」
「実は、7階は天人製の薬品が地球人に効果があるか実験するフロアでして、704号室には不妊に悩む夫婦に効果のある薬が保管されてました」
「だ、そうです、局長―。大丈夫ですよー」
ホッとしながら山崎がマイクに向かって報告したが、それは現場の近藤の耳には届いていなかった。
それどころじゃなかったからだ。
「…………トシ、それ……」
煙が収まってきて視界がはっきりしてきた現場では、近藤が土方を指差して呟く。
実際に指差していたのは土方の横だった。
「………」
そこには、土方の隊服にしっかりしがみついた5歳ぐらいの男の子が裸で立っている。
二人が呆然としてしまうのは、その子供が銀時に瓜二つだったからだ。
銀時に似た子供をこっそり連れて、関係者のみで顔を揃えていた。
居心地の悪そうな土方の隣にぴったりと付いている銀時を見ながら、山崎が言いづらそうに言った。
「えっと……企業の人から詳しく聞いてきた話だとですね……えー……そのぉ……」
「なんでぃ、さっさと言え」
「……はい……それが……不妊に悩む夫婦のための天人製の秘薬とかで……その……体内の……精子に反応して即座にクローンが生成される、という薬品らしくて……」
「精子? だったら俺とトシのクローンだって作られてんじゃねーのか?」
「それが…………他人の、のみに反応するそうです……」
「なるほど。じゃあこの子は万事屋の精子に反応した、万事屋のクローンだってことだな。どうりでそっくりなわけだ!」
ようやく納得できた近藤は満足そうだったが、沖田が呆れた声で最大の疑問を口にする。
「問題はそこじゃねーと思いやすけど。……土方さん、あんた、旦那とヤッてるってことですかぃ?」
「総悟、まさかトシに限ってそんなことあるわけないだろぉ。な、トシ? ………トシ?」
沖田の疑問を笑い飛ばそうとした近藤だったが、土方は顔どころか全身真っ赤にして口もきけない様子だった。
言い訳しようと思えば多少無理はあっても、フォロ方十四フォローなら何か言うことはできたと思う。
なのに言い訳も反論もしないで真っ赤になってしまっている姿は、"本気"さを醸し出していて近藤たちはそれ以上何も言えなくなってしまった。
.