原作設定(補完)
□その36
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#355
作成:2018/03/08
体が急に冷え込んで、土方は目を覚ました。
開いた目で見た風景に、一瞬ここがどこなのか迷ってしまった。
空はすっかり夕焼けに色に染まった公園のベンチで寝てしまったことを思い出す。
時計を見ると2時間ほど経過していて、無防備にも熟睡してしまっていたらしい。
久しぶりの非番に銀時に会う約束をしたものの、予定より早く時間が空いてしまい、屯所でうろうろしていると仕事を押し付けられてしまうと逃げ出してきた。
電話をして銀時も早く出て来れないか聞けばいいのだが、土方に会うためなら暇じゃなくても暇だと言うはずだ。
万が一にも仕事の邪魔をしてはダメだと思い、公園で時間を潰すことにした。
今日は天気も良く暖かで、ベンチに座って煙草を一本吸ったところで眠くなってしまい、そのままぐっすり2時間。
せっかくの休みなのに無駄に過ごしてしまったとも言えるが、疲れきっていた身体がだいぶ休まっていて、そう悪い気分でもなかった。
『……だけど……なんかすげーリアルな夢だったな……』
過去から現在までを順に追っていくような懐かしい夢。
楽しいことも悲しいことも辛いことも、胸がチリッと痛くなる気持ちにさせる夢。
ただ、その夢の中で銀時は赤の他人のままだった。
喧嘩していがみ合って、お互いが嫌いだと思ったまま、それ以上なにもない二人。
「…………」
土方の中で何かがモヤモヤしている。
最初から最後まで事実を追いかけたリアルな夢だったのに、そこだけ違ってしまったことが気になった。
本当に夢が違っているのか。
銀時と付き合っていると思っている今が間違っているんじゃないのか。
携帯を取り出して着信履歴を見ようと思ったが、何も表示されないのを見て携帯を閉じた。
昨日沖田に奇襲され携帯が犠牲になり、今朝新しいのが届いたばかりなのを思い出したからだ。
着信履歴も発信履歴にも万事屋の名前はないし、電話番号も登録してないし、こっそり撮った画像も消えてしまった。
ざわざわと落ち着かない気分になる。
銀時のことは間違いなくこの胸の中にあるのに、それを証明するものがない。
土方は勢い良くベンチから立ち上がった。
証明することは簡単と言えば簡単だ。
銀時に会えば良い。
約束の時間まではまだあるが、もしかしたら少し早めに来ているかもしれない。
そう思ったとき、隣から呑気な声が聞えてきた。
「何やってんの副長さん」
銀髪をもふもふっと揺らした銀時が、ぼんやりしている土方を怪訝そうに見つめている。
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