原作設定(補完)

□その35
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「お、多串くん?」

「……多串じゃねぇ」

「え?」

「ちゃんと名前で呼べ。俺も呼ぶから」

「………な、名前で?」

「……銀時」

沖田はそう言って、『二人のマヌケ面が見れないのが残念でぃ』と思いながら目を閉じた。

急展開なドキドキシチュエーションと土方からの可愛いおねだりに、銀時はそれじゃなくても軽くパニックに陥っているのに、名前を呼んで目を閉じた土方が目の前に居る。

そんなもの我慢できるはずがない。男の子だから。

それでもガバーッと一気にいく度胸はなかったので、銀時はバクバク心臓を脈打たせながらそーっと土方に顔を寄せた。

もうちょっとで唇に触れるところで土方の目がパッチリと開き、きょとんとした顔で銀時を見ている。

じーっと食い入るように見つめられて、銀時は"名前で呼べ"と言われたのを思い出し、

「……と……とと、十四郎……」

恥ずかしさで爆発しそうな気持ちになりながら言ったのに、土方は喜んでくれるどころか驚愕の表情で近付いてくる銀時の体を押し退けた。

「!? な、なにを……なんだ?」

当たりを見回して、もう一度銀時を見て、この状況が信じがたいとでも思っているかのように青ざめている。

さっきまでとは違いすぎる土方の様子に、銀時のほうも戸惑った。

「……大丈夫か?」

「…………万事屋……」

「ん?」

「…………な、なんでここに……というか、なんでてめーが……」

沖田にまんまと騙されて精神が入れ替わって、近藤に甘やかされて満足したあと、風邪を引いてだるい体では何も出来ずに眠りについた。

それからなんとなく目が覚めたら、目の前には銀時がいて、明らかにいかがわしい雰囲気の部屋にいる。

理由を訊ねようにも元に戻った沖田は屯所にいるので、銀時に聞くしかない。

先ほどまでの甘い時間を否定するような土方の呟きに、銀時は心配そうにちゃんと答えてくれる。

「……えっと……どこから?」

「……最初から」

「あー……おめーに告白してオッケー貰ったあと甘味屋まわりをして、そしたら食いすぎて気持ち悪いからここに入りてーって……」

簡潔な言葉で分かりやすく説明してくれた銀時だったが、土方は冒頭のところで頭が真っ白になっていた。

告白と言ってもいろんな意味がある。

得体の知れない男だし罪の告白の可能性もあるな、なんて考えるあたり土方は現実逃避していたのかもしれない。

「……こ、告白? 何を……」

「……え……そ、そこも改めるの?」

だが顔を真っ赤にして言いにくそうにしている銀時に、"告白"がそういう意味でなのだと知った。

土方の気持ちに気付いたかどうかは分からないが、きっと沖田は面白がってその告白に同意したはずだ。

そして銀時を振り回し、元に戻るタイミングを見計らってホテルに連れ込んだに違いない。

そう理解した途端に土方は申し訳ない気持ちになり、本当のことを話さずにはいられなくなった。

「……よ、万事屋…………実は……」

最初からを一切合財説明し、こんな突拍子も無い話は信じてもらえないかもしれないと思う土方に対し、銀時は今までの違和感に合点がいった。

『……そういや"旦那"って呼ばれたな……言われてみれば、ふしぶしで沖田くんっぽいところはいっぱいあった……』

合点がいったらいったで、沖田相手に浮かれきっていた自分に気恥ずかしくなる。

「……まじでか……」

がっくりと項垂れる銀時に、土方はすまなそうに呟く。

「……悪い……だから、告白のことは……」

その謝罪に銀時は仕方ないと思った。

するはずのなかった告白をついついしてしまい、おまけにオッケーされたことは夢のようだったのだから。

夢だと思って諦めるしかない思いながら切なくなる銀時に、土方は赤い顔を悔しそうに歪めて言った。

「……言いにくいだろうけど、もう一回改めて言ってくれ……」

「…………あ?」

「せっかくてめーから言ってくれたのに……俺、聞いてねーだろーが……」

するつもりもされるはずもない告白を、沖田のせいで聞き逃したことが悔しくて仕方ない。

土方のその言葉と表情で、どうやら諦めなくても良いことを知った銀時は再度顔を真っ赤にして、

「……あ、そ、そう……えっと……じゃあ、そのぅ……」

場所が場所だけにドギマギしながら、改めて勇気を出すのだった。





おまけ

改めて告白して、改めて返事をもらって、嬉しさのあまりぎゅーってしてみたが、場所が場所だけにやましい気持ちになった銀時に、土方はさらに改めて拒絶。

「悪い、無理」

「ええぇぇぇぇ」

「こんな急展開……心臓がもたねー」(真っ赤)

『か、可愛っ!!!!』



 おわり



ありきたりな設定の詰め合わせでしたね。
中身は沖田でしたが、たくさんイチャイチャしたでしょ?(笑)
ホテルに居たのに何もせずに終わるのもうちの二人らしい、ってことで。

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