原作設定(補完)

□その35
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「まじでか…………え……まじで、かな?」

ぱっと嬉しそうにしたくせに、すぐに信じがたいという顔をした銀時。

こんなにドキドキしている土方の気持ちは、銀時にまったく伝わっていなかったのだろうか、と沖田は思った。

カッコつけてポーカーフェイスになっていたのか、ニヤけないように仏頂面をしていたのか。

むしろそんな土方を好きになった銀時のほうに疑問を感じなくもない。

せっかく土方の姿をしているので、沖田は"土方の為(笑)"に協力してやることにした。

「まじだよ。……なんだよ、不満か?」

「そんなことないです!……そっか……良かった」

銀時があまりにも安心した顔をするので、ガラにもなく沖田の胸はチクリと痛んだ。

大丈夫だとは思うが、万が一にも土方の銀時に対する気持ちが想像と違っていたら。

数時間後に薬の効果が切れて元に戻ったとき、土方に拒絶され銀時はフラれたことになってしまうだろう。

それを思うと銀時が可哀想なので、

『せめて今だけでも良い思いをさせてやるしかねーですね』

などと面白がって勝手なことを考える沖田だった。

「お前、今、暇か?」

「え、まあ、暇だけど……」

「じゃあ、デートしようぜ」

「………………」

「……だ……万事屋?」

喜んでくれるかと思ったのに、銀時は急に気まずそうな表情になる。

首を傾げているとモジモジしながら答えた。

「で、デートですか……きょ、今日じゃないとダメ?」

「……今日じゃなきゃ見れないだろ」

「? 何が?」

「何でもない。せっかく仕事休みなんだし、次にいつ休めるか分からないぞ」

「そ、そうだよね」

「……暇だって言ってたのに、デートは嫌なのか?」

沖田の知っている銀時は、普段はやる気なさそうなのに自分達の顔を見ると皮肉ばかり言っていた。

今思えばそれは土方と話したいのに素直になれなくて喧嘩越しになった、というだけだったのだろうが割と強気な姿ばかり見ていたので、こんな風に弱気な姿は……気持ち悪い。

イラッとしているのが顔に出てしまったのか、銀時も観念して白状した。

「……きょ、今日はちょっと……持ち合わせが……ですね……」

「…………金?」

「そ、そうです」

「……てめーに金がないのなんていつものことだろうが」

「それはそうだけど……は、初めてのデートなんですし、ちょっとぐらいは……」

万事屋=貧乏、とインプットされている沖田だったので、金がないことを銀時が恥ずかしがるとは思わなかった。

いつも「団子奢れ」だの「パフェ奢れ」だの言っていたのに、デートになるとそれが言えない。

そんな見栄が銀時にもあるなんて、と沖田は内心でほくそ笑む。

「じゃあ、今日は俺が出す。次はてめーが出せ」

「……え……それでいいの?」

「いい。時間がもったいないから、行くぞ」

「はぁい」

土方とデートできるのは嬉しいのか、ちょっと考えてプライドを放り出し銀時は素直に頷いた。

沖田としても持っている財布は土方の物なので、奢ってやることはなんてことはない。

本当に時間もないことだし、沖田もちょっとウキウキしながら銀時とデートしてやる沖田だった。



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