原作設定(補完)

□その35
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「……薬……効いてましたね」

「効いてたな、この"あべこべ薬"」

山崎が押収してきたのは、飲ませた人の心情があべこべになって表面に出てくる、という薬だった。

つまり、近藤に優しいはずの土方が厳しくなり、沖田に厳しいはずが優しくなるという。

となると、山崎に対しては、

「…………普通だったな、さっき」

「…………」

いつもと変わらない様子だったのは、喜んでいいのか寂しがっていいのか、複雑な気持ちの山崎だった。

だが落ち込む前に気になることを思い出す。

「そういえば……副長と旦那ってまだ付き合ってるんですよね」

「まだ、付き合ってるんだろぃ」

「ですよね。でも……仕事中に旦那に会ったときはまあ分かるんですけど……プライベートで会ってるときも、副長って無愛想ですよね……」

「…………山崎、お前……」

「ち、違いますよっ!任務中にたまたま見かけただけですっ!あの二人はかぶき町で会ってることが多いんで!」

「……それで?」

「あ、はい。旦那はいっつも嬉しそうなんですけど、副長はそうでもなさそうで…………本当に好きで付き合ってるんですかね?」

下世話な話だったが、山崎は真選組の監察として隊士たちの行動を深読みする癖がある。

土方が銀時と付き合ってると知ったとき、もしかして土方は内偵のために自分を犠牲にしたんじゃないかと思った。

悪い意味じゃなく、そうすることで銀時の力の源のようなものを探りたい、とか、そのついでに係わりのありそうな桂や高杉の情報を得られないかと画策してるんじゃないか、とか。

何やら深く考えているらしい山崎に、沖田はにやりと笑って言った。

「丁度良いじゃねーかぃ。それを確かめに行くぞ」

「え?」

「あのヤロウ、出かけて行っただろ。昼間はよく団子屋で旦那とお茶してるんでぃ」

「……そのときの反応を見れば……」

「旦那をどう思っているか分かるってことだろぃ」

二人は顔を見合わせて、土方を追いかけるために屯所を出た。

もう姿は見えなかったが逢引の団子屋は決まっているので真っ直ぐそこに向かうと、まさにベストタイミングで到着したようだった。

「二度とそのツラ見せんな!!この腐れ天パァァァァ!!!」

土方の怒鳴り声と、フルスイングの拳が左頬にヒットして吹っ飛ぶ銀時の姿を目撃できた。

憤慨しながら立ち去る土方、何が起こったのか分からない顔で呆然とする銀時、怯える町民。

ド修羅場な風景だったのだが、座り込んでいる銀時の隣に立って沖田はぽんと肩を叩く。

「旦那、良かったですねぇ」

「え? 何が? 暴行事件ですよコノヤロー」

納得顔の沖田と山崎に挟まれて、銀時は頬を撫でながら不機嫌そうだった。
ので、団子を奢りながら土方の狼藉についての釈明をしてやる。

話を聞いたあと団子を食ってお茶を飲み、一息ついた銀時はまんざらでもない顔をしていた。

「……ふーん……そうなんだ……」

「愛されてやすねぇ、旦那」

「愛情表現最大級って感じです」

「そ、そうかな」

二人に煽てられてすっかり機嫌を良くした……と思われた銀時だが、大事なことを思い出して狼狽する。

「ちょっ……今夜は久し振りのデートなんですけどぉぉぉ!? いつ直るんだ、それぇぇぇぇ!!」

今夜は予定通りに会えるのかどうかを土方に確認しようとした途端に殴られたのだ。

「そ、早急に対応します……なんとか、たぶん」

山崎は慌ててそう約束する。

なにはともあれ、土方がちゃんと銀時を好きで付き合ってるのが分かってホッと一安心の山崎と、面白いものが見れて満足の沖田だった。


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