学園設定(補完)
□逆3Z−その4
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#79
作成:2018/10/09
担任である土方十四郎と"良い感じ"になってから3年目の秋。
"良い感じ"とはあくまでも"良い感じ"であって、"出来上がってる"わけではない、というのを坂田銀時は痛感していた。
入学してからすぐほぼ一目惚れだった土方十四郎にアタックしまくり、
「高校を卒業したら考えてやる」
そうなんとでも取れるような快いと言えなくもない返事をもらったのが夏休みの前。
付き合っているわけではないので、銀時のあからさまな好意に怒ったり睨まれたり蔑んだりもされたが、拒否されたことはなかった。
そして銀時の話すくだらない話に笑ってくれるから、卒業まで待つ決心もしていた。
だけど寂しくなることもあるのだ。
「今年もなーんも言ってくれねーなー」
10月10日の誕生日に土方から祝ってもらったことがない。
もちろん"生徒"としてなら「おめでとう」の言葉ぐらい貰っているのだが、銀時が欲しいのはそんなものじゃない。
「ちゅーとかぎゅーとか"プレゼントはわ・た・し"とまでは言わないけどさー、もうちょっとこう、なんかあるじゃん」
誰もいなくなった放課後の教室で、机に突っ伏してそうぼやく。
何もしてくれないと分かっていたけれど、友人が祝ってくれるというのを断って未練がましく学校に残っていたのだ。
諦めの悪い自分を情けなく思っていると、教室のドアから呆れたような声が聞えてきた。
「くだらない独り言言ってんじゃねー」
呆れた冷たい声でも銀時の心を弾ませるその声に、銀時はがばっと起き上がって振り返る。
「せ、先生っ」
さっきまで拗ねていたのに土方の顔を見た途端、銀時は嬉しそうに笑う。
ぼやきを立ち聞きしていた土方としては、その健気さに内心であきれるばかりだ。
「誕生日に一人でなにやってんだ」
「べ、別に何もしてませんんん」
ぷいっとそっぽを向いた銀時だったが、土方が近づいてきたあと、徐に身動きが取れなくなったことに硬直する。
体温が伝わってきてそーっと顔を正面に戻すと、土方の顔がすぐ目の前にあった。
抱き締められているのだと分かって、恐る恐る訊ねる。
「な、なななな、なんしてんですか」
「ぎゅー」
「……は?」
「次はちゅーか」
驚く銀時にさらに土方の顔が近づいて唇が重なる。
ほんの一瞬だったけれど、離れても固まったままの銀時に土方は笑った。
「なんだ、して欲しかったんじゃなかったのか」
付き合ってるわけじゃないから銀時から積極的に行動しても許してくれたことはなかったくせに、こんな心構えもないうちに不意打ちに食らわせるなんて。
すっかり負けた気分の銀時は悔しそうに言ってやる。
「……次は」
「あ?」
「もう1個言っただろ」
銀時がぼやいた"願い"を実行してくれたのだから、もう一つも要求してみたら、
「それは卒業してからだって言っただろ」
なんて思わせぶりに言って笑う土方に、銀時はメロメロだ。
『ちくしょぉぉぉぉ!!やっぱり可愛いぃぃぃぃぃ!!!卒業したら覚えてろコノヤロォォォォ!!!』
嬉しがりながら悔しがる銀時だった。
おまけ
「今まで何もしなかったのに、なんで急にプレゼントなんてくれたんですか」
「……もうすぐ卒業だからな」
「……それが?」
「卒業前に男も女も浮き足立ってくるし、お前に告白するもの好きなんかもいるだろうし、そっちになびかれるのも悔しいからな」
「……先生……もしかして俺のこと、ものごっさ好き?」
「……卒業したら教えてやる」
「(きゅん)はぁい」
はぴば、銀時!
おわり
ストックがなかったので急遽考えた逆3Zは、思いのほかバカップルな話になりました。
ま、いいか(笑)