学園設定(補完)

□逆3Z−その4
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#76

作成:2018/08/28




土方十四郎はベッドの上で目を覚ました。

見覚えのある景色は確かに自分の部屋で、昨夜は友人たちと飲みすぎてしまったことは記憶にある。

ただ、この状況に覚えは無い。

一人暮らしの安いアパートの狭いベッドには、自分以外にもう一人いた。

見たことのない顔には見たことのない銀色の天然パーマの髪がついていて、気持ち良さそうに寝ている。

それだけでも十分問題だったのだが、大問題なのは二人とも裸だったこと。

男同士なのだから裸で寝ているというだけで、すぐにエロイことを想像する人は少ないだろう。

だが、土方には明らかに体に変化があった。

『……し、尻が……痛ぇ……』

体を起こすが精一杯で起き上がることができないほどの鈍痛があちこちに走っている。

考えたくはない。

だがきっと、というか絶対に何かあった。

今まで男とそういう関係になったことはなかったが、体の痛みから"何かあった"自信があった。

それはいい。

100歩……2040歩譲って、それはいい。

問題は、相手が隣ですやすや寝ている見知らぬ男だということだ。

まだ幼さとあどけなさが残っている、ように見えなくもない。

『え、ちょっ……なんちゃら条例にひっかかっちゃう? 春には念願の高校教師になるってのにパーになる?』

どっと体中から嫌な汗が流れた。

赴任先の高校も決まり、大学も無事に卒業でき、すぐにでも引っ越ししたかったのだが、不動産屋の手違いでまだ引っ越しできずにいた。

そんな土方を慰めるために大学の友人たちと飲みに行き、羽目を外して未成年をお持ち帰りしてしまうとは。

あまり強くない酒を自棄気味に飲んでしまったこと、心底後悔した。

『二度と……二度と酒は飲みません! マヨ酒が美味くてついつい飲みすぎてしまったけど、もう飲みません!』

教師になれば酒とエロ事にはことさら問題視される。

禁酒を誓ってベッドの上で悶絶する土方に、寝惚けた声がかけられた。

「何暴れててんですか」

目を覚ました若い男は大欠伸をしながら体を起こす。

起きた姿を改めて見ると、やっぱり若い。すごく若い気がする。

土方は青ざめながらおずおずと質問をした。

「お、お前……誰だ?」

そう聞かれて男は一瞬ぽかんとした後、がっくりと肩を落とす。

「やっぱり覚えてないかぁぁぁぁ」

あまりのがっかりっぷりに土方の方が悪いことをしたような気持ちになってしまう。

思わず謝りそうになるが、男は気を取り直すのが早かったようで、顔をあげてにっこり笑った。

「昨日の夜、十四郎にナンパされたんだよねー」

「と、とうし?……な、ナンパ?」

「大勢と飲み会してたんでしょ? なんか一緒に飲んでた女の子に猛烈アプローチされていて、酔ってどっかに連れ込まれかねない勢いだったとかで、通りすがりの俺に声をかけてきたんだよ」

男の説明の前半には覚えがある。

酒もだいぶ入っていたところにぴったり体を寄せて張り付かれ、店を出て一人で帰るときにも着いて来られそうになり身の危険を感じていたことを。

既成事実なんか作られてはたまらないと、焦るあまりに通りすがりの誰かに助けを求めたような気もするが、それがこの男かは覚えてない。

事実なら一応土方を助けてくれた、ということになる。

「……そうか……じゃあ、なんで……こ、こんなことに?」

2人とも裸であることと、体に変調があることを知っているからか、気恥ずかしそうな土方を見て男はてへっと笑った。

「十四郎がめっちゃ好みのタイプだったので、助けたお礼にって一緒にお酒飲んでから口説かせてもらっちゃたー」

「!!」

男に罪悪感が全くないことと、助けを求めた相手に既成事実を作られてしまったことが、土方に衝撃を与える。


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