学園設定(補完)

□逆3Z−その4
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#70

作成:2018/05/04




土方十四郎は一人暮らしのアパートで、暇そうに煙草の煙を見つめていた。

GWには久々に地元に帰って友人たちと飲もうかと思っていたのに、学校でちょっとしたトラブルがあって、一昨日、昨日と登校する羽目になった。

GW全滅も覚悟していたのだが、それはなんとか回避できたものの、ぽっかりと予定が開いてしまったのだ。

大丈夫だと連絡を受けた時点ですぐに出発すれば少しぐらいのんびりできたのだが、それも面倒で結局家でゴロゴロしてる始末。

カレンダーをちらりと見て、小さく溜め息をつく。

5月5日。

三十路目前になると誕生日なんてたいして嬉しいものでもなかったが、誰よりもそれを喜んでいる者がいた。

二人きりでそれを祝うのを楽しみにしていたのに、地元に帰るから無理だと告げたら、この世の終わりみたいにがっかりされた。

だが、土方を困らせまいようとして精一杯笑い、

「じゃあ、俺はバイト三昧しようっと。帰ってきたらデートしてね」

そう言った歳の離れた可愛い……と言えなくもない恋人。

地元に帰らないと決めたときに、会えると電話することも考えた。

だけどバイト三昧してるはずだし、会えるとなれば予定を変更しかねず、それはバイト先にも迷惑だろう。

なので連絡もせず、こうして一人で寂しい誕生日を過ごすことになった。

地元に帰っていれば友人たちが祝ってくれただろうし、帰らないことにしていたら恋人の手料理でなんとなく照れくさい誕生日になっていたはずだ。

それが一人で過ごすことになっただけなのに、別に嬉しくもない誕生日なのに。

土方は寂しいと思ったことを誤魔化すように立ち上がる。

ダラダラしてたので朝から何も食べずにいたのだが、外が薄暗くなってくる頃、さすがに腹が減ってきた。

買い物もしてないのでカップ麺ぐらいしかないので余計に侘しくなりそうだと思ったとき、玄関のチャイムが鳴る。

部屋の明かりを点けてから玄関へ向かい、ドアを開けたら誰かが中に飛び込んできた。

「なっ…………さ、坂田?」

「ホントに居た! 何やってんの!? 何やってんのコノヤロー!」

土方を責めながら半泣きでしっかりと抱き付いているのは、土方の担任しているクラスの生徒であり、内緒で付き合ってる恋人でもある坂田だった。

「な、なんで……」

「ヅラが、昨日学校で先生を見たって、さっき飯を食いに来たときに言ってて! 電話したのに電源入ってないし!」

どうやら坂田のバイト先であるファミレスに桂がきて、土方が地元に帰っていないことがバレたようだ。

桂が学校に来てたのも気付かなかったし、携帯の充電が切れていたことも気付かなかった。

「……お前、バイトは」

「……頼み込んで今日は早く終わらせさせてもらった」

「それじゃ店に迷惑……」

「分かってるけど今日だけは許して! だって……先生の誕生日じゃん……」

そんな風にしゅんとされたら、もうそれ以上の小言が言えるはずもない。

二度も寂しい思いをさせたのに、こうやって荷物を抱えて会いにきてくれたのだ。

「……何、買ってきたんだ?」

土方が尋ねると、坂田はぱっと嬉しそうな顔をして、甘い匂いのする箱と、重そうなレジ袋を持ち上げてみせる。

「ケーキと! 先生が前に美味いって言ってくれた餃子の材料と! あとビールも!」

ケーキはともかく、あとの二つに反応して土方は腹が減っていたことを思い出す。

さっきまでの寂しい時間が、あっという間に幸せな時間に変わった。

土方が喜んでくれるかとワクワクした顔をしている坂田に、照れくさいけれど期待に答えてやろうと思う土方だった。


 おわり



書き始めたときは、つきあってない二人のはずでしたが、
なんとなく、こんな感じになりました。
やっぱり学園設定で誕生日ネタはむずかしい。
普通でもヘタレな銀さんなのに、土方年上だと超へタレ(笑)

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