学園設定(補完)

□逆3Z−その4
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#67

作成:2018/04/16




「先生? 土方先生っ」

「……は、はいっ!」

呼ばれてハッとした土方は慌てて返事をして、隣に立つ女生徒に笑われる。

ぼーっとしていたところを見られ、気恥ずかしくなりながら学級日誌を受け取った。

副担任をしているクラスのもので、今日は担任が休みなので代理の土方に持ってきたのだ。

今日のページを開いて土方は眉間にシワを寄せる。

ぼーっとしていた元凶の名前がそこに書かれていたから。

"遅刻 坂田銀時"

新卒でこの高校に赴任してきた日、やたら目立つ頭をした生徒に、信じられないようなモノを見るような目で見つめられた。

それから密かに付き纏われて2年が経過。

何しろあの頭である。

どこに居ても目につくし、本人は隠れているつもりなのかもしれないが見えているし。

それが不快であっても、教師になりたての土方にはそれを止めさせることはできなかった。

やたら意識するのも自意識過剰なのかもしれないし、第一生徒に嫌われるのは怖い。

見てるだけならまだマシかと我慢していたら、とうとうおかしな夢を見始めてしまう。

江戸時代風なのに機械やら宇宙船やらが入り乱れ、侍が携帯電話やテレビを見るという時代錯誤な夢。

そこで俺は"新撰組"の副長で、煙草とマヨネーズをこよなく愛し、局長の近藤と、先輩だけど後輩の沖田に振り回されていた。

舞台がおかしいのはともかく、そこまでは割と納得がいく。

自分の歴史と趣味嗜好にリンクしていたからだ。

土方をぼーっとさせてしまう原因は他にあった。

その夢で坂田銀時は、同世代で万事屋という便利屋的な仕事につき、適当でいい加減で、でも強くて癇に障った。

最初にこの夢を見たときは、坂田の付き纏いにイライラしたせいかと思ったのだが、夢は一度きりで終わらず、たびたび見るようになってしまう。

それだけならまだ良かったのだが、ひと月前ぐらいからおかしなことになってきた。

夢の中の土方は、嫌いだったはずの坂田に惹かれはじめ、言えない想いを抱え始める。

朝、目が覚めて、はっきり覚えているその夢に、

「……はぁぁぁぁ!? ないないないない、ないだろ!!」

思わずそう叫んでしまったぐらいだ。

そんな夢を見てしまったのは坂田のせいじゃないかと腹を立てていたが、つい先日、とうとう自分から坂田に告白し、しかも両想いだったらしく付き合ってしまうという展開になってしまった。

とんでもない夢を見てしまった自分にひとしきり悶絶したあと、学校で遠くからでも分かる坂田を見たとき、心臓がバクバクと脈打つの感じた。

夢の影響で坂田を好きになってしまったとかそんな単純なことじゃない。

何か、身体の内側、とても深いところから湧き出るような気持ちだった。

その理由が分からないまま、それでも学校へ行かなければならない。

学校へ行くということは坂田に会わなければならない。


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