学園設定(補完)

□逆3Z−その4
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#64

作成:2018/02/13




土方は職員室の自分の席で、眉間にシワを寄せながら机の上を睨んでいた。

カラフルで色とりどりの小さくて可愛い箱や袋からは甘い匂いがしている。

14日、バレンタインデーの朝から、女生徒がキャッキャとはしゃぎながら持ってきてくれたものだ。

割と自由な校風のため、こういう類いのイベントに規制がなく、禁止されていない以上「いらない」と言うのも無粋なため、受け取るしなかった。

だが甘い物が苦手な土方はチョコなんて欲しくないし、ましてや後日「美味しかった?」と聞かれても答えようがない。

他の義理チョコしか貰えない男性教師と比べて、土方のは本命色の強い高級そうなチョコが多いのだ。

適当に「美味かった、ありがとう」と笑ってやればいいだけなのに、不器用で正直な性格のためにそれができそうにない。

が、苦手だけれどせめて一口食って感想を言うぐらい、と決めてチョコを見つめて30分が経過している。

なんでバレンタインデーとかいう菓子業界の勝手なイベントのせいでチョコなんか食わなきゃいけないんだと、と大人気無いことを考えていたら、

「うっわ、すげーチョコ。うまそー」

窓の外からそんな歓喜の声が聞えてきた。

見ると、そこには土方が担任をしているクラスの生徒が立っていて、目をを輝かせて土方のチョコを見つめている。

「坂田」

「土方せんせ、モテモテだね。高そうな本命チョコばっかじゃん」

純粋に羨ましそうに言われても、僻んで嫌味っぽく言われても、土方には嬉しくないことだ。

だがそれは生徒に言うことじゃないので、適当に誤魔化そうと思っていたら坂田は意外なことを言い出した。

「あ、それ!○○のバレンタインデー限定チョコ!すげー美味いんだよなぁ、ナッツクリームが入ってて」

うっとりとそう言いながら指差したのは、目の前にあるチョコの一番手前にあった箱。

「……好きなのか、チョコ」

「ものごっさ好き!」

「……詳しいのか……こういうチョコに」

「わりと? 高杉がボンボンだからさー、子供のころ家に遊びに行くと高級なおやつが出てきて、超幸せだったぁぁ」

仲の良い友人といつも一緒につるんでいるのを知っているぐらいしか、坂田という生徒に対する印象はなかった。

まあ、初めてクラス担任を任されて、手のかかる生徒でいっぱいいっぱいの土方にとっては良い生徒と言える。

しかも、とても良いタイミングでとても良い話を聞かせてくれた。

土方は別な箱を開けて漂う甘い匂いに小さく顔をしかめながら、それを坂田に差し出す。

「これはどうだ?」

「え、食って良いの?」

「……食いたいならな」

「うわぁい」

土方の意図は知らずに、坂田は嬉しそうにチョコを一つ取ると口に放り込み、何度か噛んでうっとりした顔をする。

「うまぁぁぁぁい! ちょっとホロ苦だけど柔らかくて口の中でとろけるぅぅぅ」

その言葉と食べさせたチョコを頭にインプットし、土方は次の箱を開けた。

「これもどうだ」

「まじでか!」

そんなに喜ばれると、通りすがりの生徒の味覚を利用している土方はとしては心苦しいが、坂田も喜んでいるし一石二鳥だと考えてチョコを提供する土方だった。




その頃、教室。

「あ? 銀時はどこ行った?」

「土方のところだ。チョコを貰いに行くと言っていたぞ」

「なんじゃあ、いつのまにそういう関係に進展しておったんじゃ?」

「するかよ、あの奥手が。あれだろ、去年、チョコの感想を聞かれて困ってる土方が可哀想だったから手伝ってやりたいって、言ってたやつだろ」

「だろうな」

「あー。土方が甘いもん苦手そうじゃなんて、よく気がついたのう、あいつ」

「そりゃあ、あんだけ毎日こっそり覗いてりゃあ気付くだろ」

「ただの味見係だろうが、それで"貰った"と思えるのなら簡単な男だ」

「単純とも言うな」


 おわり



即席で考えた逆3Zでした。
……即席すぎて、ここに書くことがない(笑)

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