虎牛設定(補完)
□その3
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しかし、2年後、
「銀時! いい加減さっちゃんと付き合ってやれよ!」
「嫌だっていってんだろ、諦めろ」
牛による恋人の斡旋行為は続いていて、それを虎は拒絶し続けていた。
2年経って牛は体以外にも成長していた。
怯えた様子もなく、虎の家の窓から上半身を乗り出してブーブーと文句を言う。
「怖い怖―い虎に日参してお願いしている俺の努力を無駄にするなよなー」
「なにが怖いだ。10日目にキレて平気になったくせに」
あの日から毎日銀時のところに来て、同じことをお願いし続けている十四郎は割と短気だった。
素っ気ない銀時に怒って、
「頼んでるんだからちゃんと話を聞けコラァァァ!!」
と怒鳴り、それから銀時が怖くなくなったらしい。
ずっと断っているのに銀時との交際を諦めない猿も、伝達役を断らない牛も、たいした執念深さだ。
「さっちゃんは村でも割と人気あるんだぞ。美人だし、けっこう優しいし、一途だし」
「だったら村のやつと付き合えばいいだろ」
「お前が好きだって言いまくってるから無理。さっちゃんを振ってるから、お前、虎だってこと以外にも恨まれてるぞ」
たぶんそのせいだと思うのだが、最近は十四郎とさっちゃん以外にも銀時の様子を伺いに来る連中が居て鬱陶しかった。
すべての”鬱陶しい”を解消するために、別に肉なんか食べたくないけれど誰かを襲ってみるという手もある。
だが、銀時にはもうそれができない理由があった。
「ちびっとでも付き合ってみたらいいのになぁ」
今日も任務失敗した十四郎が、そうつぶやきながらふて腐れるのをちらりと見てから、
「……そしたらお前もう来なくなるだろうが」
聞こえないようにそう言った。
毎日ここへやってきて、「付き合って」、「好きなんだ」と言われ続けるうちに、この牛が可愛く思えてきてしまったのだ。
残念ながら代弁であって十四郎にそう思われているわけではないのだが。
「あ、そうだ、作っておいたぞ」
銀時が思い出したようにそう言うと、十四郎はぱっと顔を輝かせた。
「まよねーず!」
銀時は昔、ばったり出会ったおかしな羊を連れた龍に、マヨネーズという調味料の作り方を教わったことがある。
それを使用したサラダとかサンドイッチなどをご馳走したときに、十四郎はすごく気に入ってしまったのだ。
作り方は簡単なのに教えず、「材料が手に入ったら作ってやる」と焦らしてたまに作ってやっていた。
マヨネーズを渡すと本当に嬉しそうに笑う十四郎。
”餌で釣っている”ようなものだが、この顔を見るとそれでもいいやと思えてしまう。
こうしていたらいつか、十四郎も俺を好きになってくれないかな、と願う虎だった。
おわり
……オチを考えずにスタートしてしまったので、
なんかふんわりとした終わり方になっちゃった。
ま、いいか。いつものことだ。
この虎と牛も、見た目13歳ぐらいです。
どうしても虎牛は子供になっちゃうなぁ。