虎牛設定(補完)
□その3
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夏の終わり、虎の住む家に幼馴染が訪ねてきた。
小さい頃の虎を知っているので、虎を怖がらない……どころかバカにしているところがある。
「相変わらず一匹で寂しく暮らしてんのか。寂しい野郎だ」
自分だって昔は一匹狼ならぬ一匹猪だったくせに、最近は舎弟的な連中とつるんでいるらしく上から目線で言われた。
昔から虎に対してそんな感じだったので、虎も慣れっこなので軽くあしらう。
「俺は一匹でも平気なんだよ、ほっとけ」
事実そうだったが、ここずっと毎日ここへ通ってくる牛がいるので寂しくもなかった。
でもそのことは言わずにいようと思ったのに、
「ここに子牛が訪ねてこなかったか?」
龍にそう言われてしまった。
「子牛?」
「な、なんでお前が知ってんだ」
「会ったからだ」
毎日会っているのに何も知らない子牛のことを流派教えてくれた。
「あの子牛は麓の村に住んでいたんだが、ずっと病に伏していた母牛が死んでな。もともと厄介者扱いされていたところへ子牛一匹になってしまって居場所が無くなってしまったんだ」
時折会話で見せた悲しげな表情の原因はそれだったのだろう。
虎のとの勝負に負けたあと、毎日どんな気持ちで村に帰ったのか。
虎がしんみりしているのに気づかず、猪が話を先に進める。
「それでどうしたんだよ」
「うむ。子牛に会って"どうやったら一匹で生きていけるか"と聞かれたので、デンジャーでバイオレンスな猛獣になれば生きていけると教えた」
虎は嫌な予感がした。
「"どうやったらデンジャーでバイオレンスな猛獣になれるか"と聞かれたので、森の奥に住んでる虎に弟子入りすればいいと教えてやったのだ」
「てめーのせいかぁぁぁぁ!!!」
そして龍の軽はずみな提案にまんまと唆された牛が、「弟子にしろ」と虎の元へやってくるようになったのだ。
事情が分かったのだから、子牛に話してその気はないと言ってやればいい。
だが、事情が分かったからこそ、一匹で生きていく方法を探す牛を無下にできなくなってしまった。
それでも誰かと一緒に暮らすことを決意するのにしばらく要してしまった虎は、秋になるころ"ワザと"負けてやるのだった。
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暗くなる前に荷物を抱えて子牛が戻ってきて、
「せ、先生……お世話になります」
なんてかしこまった挨拶をされた。
虎は露骨に嫌そうな顔をして言う。
「先生呼ばわりされると嫌な奴のことを思い出すから止めろ」
「……でも……」
「俺の名前は銀時だ。それに世話をするのは俺じゃなくてお前。すぐに飯の支度をしろ」
素っ気無い言い方をされたが、なんだか虎が照れ隠しをしているように見えた。
理由は分からないがそれがちょっと嬉しかった子牛は、
「うん!!」
元気に返事をして台所へ向かって走っていく。
飯の支度をしている間に"師匠っぽく"振舞えるように落ち着こうと思っていた虎だったのに、牛はすぐに戻ってきた。
「お待たせ!」
「早っ! 全然待ってな………………なんだ、これは」
「俺の好きな美味しい草を途中でたくさん取ってきたんだ!」
「……その上のてんこ盛りのマヨネーズは?」
「十四郎スペシャルだ!」
ドヤ顔の子牛を見て、もう弟子入りを許可してしまったことを後悔する虎だった。
おわり
という、いつもの展開の虎牛でした。
銀土? ねえ、これ本当に銀土?(笑)
仲良く暮らして欲しいと思いました、まる。
作文!?……的な(笑)