虎牛設定(補完)

□その3
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近付いてきたその虎は、近くで見ればみるほど銀時にそっくりだったが、笑顔は営業用という感じだ。

「久しぶりじゃん。つーか、生きてたんだ。心配してたんだぞ」

そう言われて銀時は両手をぎゅっと握り締め、十四郎の聞いたことのないような怖い声で言う。

「……よく言う、俺を、捨てたくせにっ」

十四郎の前に現われた白い虎は子供なのに一匹で、大人しく寂しげだった。

銀時は何も言わなかったが、群れからはぐれてしまったのかと思っていたのにそうじゃなかったらしい。

そんな銀時の恨み事に、黄色の虎は冷ややかな笑顔で言った。

「……だって仕方ねーだろ。みんなが白い虎は不吉だって言うんだから。身体は弱いし、肉も食えねーし、一緒にいるのが嫌だって決まっちゃったんですぅ」

「……っ……」

「どうせ今も嫌われてんだろ。白い虎なんて気持ち悪いもんなー。可哀想だから俺が面倒みてやろうか?」

「…誰が……」

とても家族とは思えないような言葉に、カッとなった銀時が一歩踏み出そうとしたとき、目の前に十四郎が立ちはだかる。

そして銀時より先に怒鳴り出した。

「必要ないっ!!」

「ん?」

「銀時は俺の村のみんなに好かれてる! 一匹で生きてきたからいろんなこと知ってて教えてくれて、みんな感謝してる! 気持ち悪くなんかない!!」

顔は見えないけれどきっと悔しそうな表情をしているのだろう。

銀時にそっくりとはいえ見ず知らずの虎に向かうのは怖いはずなのに、肩を小さく震わせながら銀時を庇ってくれた。

「…十四郎…」

カッとなった気持ちが落ち着いた銀時に対し、金時のほうは嘲笑気味で言う。

「なにコイツ? 牛と一緒に暮らしてんの? ぷふっ、白と黒で似合いだな」

バカにされたと分かった十四郎は、負けじときっぱりはっきり言い放つ。

「超仲良しなんだから似合いでいいんだよ! お前なんか銀時にちっとも似てない! 性格超悪いぞ!!」

「……と、十四……」

「銀時はもう俺たちと暮らすんだから、お前なんかいらない! ばーかっ!!!」

そしてくるりと振り返って銀時の腕を掴んで、

「帰るぞ、銀時!!」

怒りながら強引に手を引き、二匹の虎を呆気にとらせたまま歩き出した。

地団駄を踏むような勢いで歩きながらも、十四郎は収まらない怒りを吐き出している。

「なんだアイツ、なんだアイツ!! すげー嫌なヤツ!! むかつく!!」

とてもご立腹のようだが、それが銀時には嬉しかった。

そして嬉しがっていることに気付いた十四郎がムッとして、

「銀時だってガツンと言ってやればよかったんだ! なんで何も言わなかったんだよ!」

しっかりと腕を掴んだまま言うので、銀時は余計に笑ってしまう。

「十四郎が先にガツンと言っちまって、俺のこと引っ張ってきちゃたからじゃね?」

「ハッ! ……も、戻ってガツンと言うか?」

自分がしたことを思い出して申し訳なさそうに言うので、今度は銀時が十四郎の手を引いて歩き出す。

「いい。早く村に帰ろうぜ」

「……うん!」

怒りも悲しみもすっかり忘れて、二人は並んで歩き出した。



追記

「お待たせ〜」

「金ちゃ〜ん、もう、待ったよ〜」

「ごめんね。来てくれてありがとう」

「あのね、待ってる間に話してたんだけどね、金ちゃんとても新人には見えないけど今まで他の店にいたのかな、って」

「まあね。この町のじゃなくて、いろんなところを点々としたんだよ」

「そうなの? 虎だから?」

「いや……子供の頃、俺の居ない間に群れから追い出されてた弟を探すためだったんだよねー」

「えー、金ちゃんに似てる? 私たちも協力しようか?」

「あ、いいのいいの、もう見つかったから」

「ホント? 会えたの?」

「うん、可愛い子連れて元気そうだったよ」

「良かった〜、金ちゃん、優しいねー」

「……なーんちゃって、嘘、嘘。そんな良い話なんてあるわけないじゃん」

「ええぇぇ、やだ、金ちゃ〜ん(笑)」


 おわり



いつもの設定に金時を無理矢理足した話になりました。
そしてありがちな追記を足して、強引に良い話にもっていってみました。
あいかわらずうちの牛はバカっぽいなぁ……と思ってたのですが、
Twitterで見かける絵描きさんたちの牛も、割とこんな感じだよね(笑)
虎牛は子供のほうが楽しいな。

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