原作設定(補完)

□その34
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その後、結局銀時から離れようとしない土方は、万事屋に避難してから真選組に連絡して迎えに来てもらった。

新八たちも迎えにきた山崎も、"銀時ラブラブ"な土方に面食らっていたが、適当に言い包めて納得させた。

一番大変だったのは土方のほうで、

「嫌だ、帰らない!俺もここに住む!」

「副長ぉぉぉ!しっかりしてください!屯所でみんな待ってますよ!」

「俺が居ないほうが気楽でいいと思ってんだからちょうど良いだろーが!」

銀時にくっついたまま帰ろうとしない土方は、山崎ごときの説得では聞いてくれなかった。

なので銀時が変わりに言う。

「土方くん……とりあえずお仕事もあるんだしさ、帰ったほうがいいんじゃないかなぁ」

「……俺はてめーと一緒にいてーんだ」

「う、うん。じゃあ、お仕事終わってからなら……」

「来ても良いか!?」

「い、いいよ」

「分かった! 仕事終わらせてすぐに帰ってくるから!! おら、山崎、さっさと行くぞ!!」

「は、はいぃぃぃ!」

山崎に怒鳴りつけて万事屋を出て行く土方は、いつもの副長の顔になって帰って行った。

静かになった万事屋で、銀時は深いい溜め息をつく。

そんなお疲れの銀時に、子供たちは疑いの眼差しを向けていた。

「……銀さん、土方さんに何をしたんですか……」

「……な、なにをしたって? 俺は別に何も……」

「トッシーおかしかったアル」

「あれは……土方くんがね、俺を好きだって……」

「なるわけありません!」

「なるわけないアル!」

揃って断言され、銀時は余計に本当のことが言えなくなってしまった。

"土方をずっと好きだったので薬を使っちゃいました"なんて言ったものなら、本当に軽蔑されてボコボコにされたあげくに出て行ってしまうだろう。

「……何もしてねーから……」

嘘をつく後ろめたさと、土方に対しての狼藉を考えてしょんぼりしている銀時に、納得してないはずの新八と神楽は何も言わなかった。

銀時がこれからしなければならないのは一つ。

土方に飲ませた薬を中和するものを見つけて、それを再度土方に飲ませなければならない。






その日の深夜。

玄関の呼び鈴が鳴って、嫌な予感がすると思いながら玄関の扉を開けたら、案の定そこには土方が立っていた。

どこから走ってきたのか息を切らせていて、それでも銀時の顔を見ると嬉しそうに笑う。

「し、仕事終わったぞ」

これが薬のせいで複雑な気持ちだとしても、土方が自分に愛に来てくれたことは銀時だって嬉しい。

できるだけ早急にこの事態を解決する手段を探すから、今だけは一緒に居てもいいだろうか。

「……いらっしゃい」

小さく笑った銀時に、土方はホッとしたような顔をして中に入ってきた。

勢いよく訪ねてきたはいいけれど、土方が万事屋に私的に訪問するのは始めてのこと。

神楽はもう寝てしまったので二人きりのリビングで、銀時はどうやって土方をもてなせばいいかと考えたとき、つんと袖口を引っ張られる。

振り返ると土方が視線を逸らしてモジモジしながら、

「……万事屋……」

そう言って顔を赤くした。

銀時の股間センサーがギューンと一気に振り切れる。

『こ、これはっ!!漫画で極々稀に見られる"可愛い恋人のおねだりサイン"というやつですかぁぁぁぁ!!?』

そんな貴重なものが自分で見れるなんて。

ましてやそれが土方によって行われているなんて。

感激してそのままフラフラとその誘惑に乗りたくなってしまった銀時だったが、触れる直前に我に返った。

コレは違う。土方の本当の意思じゃない。

浮かない顔で手を止めた銀時に、土方が寂しそうに呟いた。

「……万事屋……やっぱり俺じゃいやか?」

「違う。そーじゃなくて……えっと、神楽。神楽が居るから……ここじゃ……」

「だったらどこか他で……」

「土方くーん。無理して仕事仕上げてきたんだろ。疲れてそうだし、そんなに急がなくてもよくね?」

粘る土方の顔をよく見たら、うっすら目元にはクマも出来ているし顔色も悪い。

昼間の約束のために、あれから休憩もせずに仕事をしたんだろうと簡単に想像できた。

事が事だけに急かして自分から迫ったことや、銀時にそれを諭されたことが恥ずかしかったのか、土方はしょぼんと黙ってしまった。

それがすべて自分のせいだと思うと銀時の胸も痛む。

ので、すべてを拒絶することができなくてつい言ってしまう。

「だ、だから、今日はゆっくり休んで、そういうのは……また今度にしませんか」

「……休む…………泊まっていくのは良いのか?」

「…………そ、そうね……泊まるだけなら、うん、大丈夫、かなぁ」

迷っている銀時の言い方は歯切れが悪かったが、とりあえず了承と取ったらしい土方が嬉しそうに笑うのでそれ以上拒めなかった。

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