原作設定(補完)

□その34
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本日の真選組の警備は神社だった。

政府のお偉いさんが毎年参拝するというので朝から警備しているのだが、予定が変わって今日は来ない"かも"しれないという状況で待機させられている。

確定すればすぐに引き上げて、それから銀時と飲みに行く、それを楽しみに土方は仕事をしていた。

そんな2日目でもまだまだ込み合う神社で、両手と口で屋台でゲットした食べ物を持った神楽と遭遇する。

「もご、うんがごへんがつ」

「……物をくわえたまま喋るんじゃねー」

憎たらしい顔つきから何を言われているかは分かったが、お妙に着せてもらったのだろう可愛い晴れ着を着ておいて、口の周りをタレだらけのしている少女に文句を付けたくなっても仕方ない。

神楽は言われたとおり口の中の物を飲み込んでから仕切りなおした。

「おう、チンピラ警察」

「……他に言うことはねーのか、正月早々から」

「神楽ちゃんっ、もうっ! 土方さん、あけましておめでとうございますっ!」

「ことよろアル」

慌てて飛んできた新八に窘められ、神楽も一応あいさつをしてくる。

そんな二人を見て土方は小さく笑った。

銀時を付き合うようになって、二人にそれがバレてしまった後から万事屋に出入りすることが多くなり、二人ともよく話すようになっていた。

とくに中々懐いてくれなかった神楽がちゃんと挨拶してくれるなんて、と変な親心まで湧いてしまう。

「おめでとう。今年もよろしくな」

「よろしくお願いします。あ、すみません、銀さんは今日は一緒じゃなくて……」

「……ああ、知ってる。後で一緒に飲むから」

すかさず気をきかせて教えてくれた新八だが、すでに電話で約束を取り付け済みだったので一応教えてみた。

すると二人は揃って"あーあ"という顔をする。

「飲むっていつも行ってる居酒屋ですよね? 今日、お休みですよ」

「えっ、まじか」

「さっき店のおじさんとおばさんに会ったんです。今日は店休んで孫の顔を見に行くって言ってました」

それを聞いて土方はすぐに携帯を取り出して万事屋に電話をかけてみた。

「……出ないな……」

「もう出かけちゃったかもしれないですね」

携帯電話を持ってない銀時には連絡のとりようがないので、

「……マズイな……まだ掛かりそうなのに、寒い中を待たせちまうな」

そう心配する土方に二人はケロッと言い放つ。

「それは大丈夫アル」

「あ? なんで……」

「銀ちゃん寒いの嫌いアル。ずっと待ってるはずないネ」

「寒いからってコタツから出ない人ですからねぇ。諦めて帰ってくるはずなんで、後で家に電話したほうがいいかもしれないですよ」

「……そうか」

新八と神楽がそう言うならそうなんだろうし、家で待っててくれるほうが確かに安心だ。

いつも居酒屋で待ち合わせ、土方が仕事で遅れても飲んで待っててくれた。

ちょっと不安になりながら、新八たちと別れたあと仕事に戻り、無駄な待機から解放されたのはそれから2時間後だった。

隊士たちを解散させたあと、土方はこっそりと万事屋に電話をしてみる。

が、二度掛け直しても銀時は電話に出ず、土方は"もしかして"と思って急ぎ約束の場所へ向かった。

途中で電話をしても留守だった銀時は、店の前で待っていた。

陽が落ちてしまうとめっきり冷え込んで、上着を着ていても寒そうに身を縮ませていたのに、土方の姿を見つけるとパッと顔を輝かせる。

「土方くん、お疲れさん」

「…………ここで待ってたのか、ずっと」

寒いのは嫌いだから待ってなかったんじゃないのか。

そう思って聞きながら、近寄ってきた銀時の指先に小さく触れてみた。

体温はすっかり奪われてしまった冷たい指先。

だが銀時はきょとんとした顔で笑う。

「まさか。店休みだったから他で時間潰して、さっき来たところですぅぅ」

それが本当か嘘かは分からない。

土方は銀時の腕を掴んで通行人から見えないところまで引っ張って行くと、そのままぎゅーっと抱き付いてやった。

さすがに銀時も驚いたようで、

「ひ、土方くん? どした?」

密着した胸の奥の心臓はバクバクと早くなっている。

土方は、冷え切ったその身体をしっかりと抱き締めて言った。

「……俺はずっと寒いところにいたから……温めやがれコラァ」

「は、はい」

戸惑う銀時に抱き締め返されて、土方は満足そうに目を瞑る。

自分に会うためならいろんなことを我慢してくれているらしい銀時に、今年はもうちょっと優しくしてやろうと思う土方だった。


 おわり



本当は、飲みに行くのを後回しでイチャイチャしよう、っていう展開にするはずだったのですが…。
ほら、うちの二人はへタレだから、ハグで終わっちゃいましたよ。
ホントに今年もどうなることやら(笑)

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