原作設定(補完)

□その34
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#333

作成:2018/01/03




「銀ちゃん、初詣に行きたいアル」

「めんどくさい……寒いし」

「でも、銀ちゃん……」

「神楽ちゃん、諦めなよ。銀さんはそうなったらテコでも動かないよ」

「ちっ、今年もダメな大人アルな」

「ダメでいいですぅ。いってらっしゃい、お土産よろ」

「買ってきませんよ!」

やる気のない銀時にブーブー文句を言いながら、新八と神楽は出かけて行った。

人が減ったのでコタツに首までもぐって、銀時はぬくぬくしながらぼやく。

「子供は風の子、大人はコタツの子、って言うじゃない? 誰が言ったんだよ! かぶき町の坂田さん。 お前だろ!」

一人会話でボケとツッコミをするのは虚しいけれど、外には出て行きたくないので仕方ない。

コタツの中からチラリと隣の部屋を見た。

他に暖房器具のない万事屋では、コタツから出ると寒いだけなので避けたいところなのだが、新八たちが出かけてしまったので銀時はしぶしぶ急いで机まで行って電話を掴むと折り返してコタツに飛び込む。

畳の上に電話機を置くと、コタツ亀になりながらソレを見つめた。

「……どうせかかってこないんだろうけどさ……」

寒いから出かけたくないというのも本当だが、もう一つ出かけられない理由があった。

大晦日から、かかってくる可能性の低い電話を待っている。

期待はしてない、忙しいのは分かってる、別に正月だからって何もない。

そう何度も自分に言い聞かせたのは、そうしないと寂しくなってしまうから。

溜め息をついて目を閉じたとき、頭上の電話が鳴り響いた。

ぱちっと目を開けて「幻聴?」と一度疑ってから、改めて電話を見上げて鳴っているのを確認し、慌てて手を伸ばす。

「は、はいっ、万事屋銀ちゃん!」

「……2日なのにもう仕事か?」

受話器越しの愛おしい声に銀時はパッと顔を輝かせ、コタツから出ると電話の前に正座した。

「万事屋だからね!仕事があればいつでもなんでもしなくちゃー」

「そうか」

「あ! 土方くん、あけましておめでとう!」

「……おう。おめでとう」

予想外に早く電話してきた土方に銀時の声はテンション高めで、電話の向こうで苦笑しているのが分かる。

本当は三が日は仕事も休んでいるのだが、土方に"働き者"だと誤解されたのなら訂正はしないでおきたい男心。

それよりも土方が電話をしてきた理由のほうが気になった。

「で、どうしたの? 何か用事? まだお仕事中?」

「ああ。だけど少し早く終わりそうだから、酒でも飲まねーかと思ったんだけど、てめーに仕事があるなら……」

「大丈夫!! 仕事は休……じゃない、すぐに終わるから!うん!」

「そうか。じゃあ、夕方ぐらい終わる予定だ。遅れるかもしれねーが……」

「大丈夫!! いつもの店でいい? 先にのんびりやってるから慌てなくていいから!うん!」

思いがけない土方からの誘いに、さらに銀時のテンションは上がって興奮気味に予定を決める。

こんな風に急に予定が決まるのも、そして急に予定がダメになるのも悲しいことだが慣れっこだ。

だから土方が気にしないように念を押してやる。

「分かった。じゃあ、あとでな」

その重いが通じたのだろう、土方がそう言って電話は切れた。

銀時は立ち上がり、寒さなんかすっかり忘れてしまったようにウキウキと出かける準備を始めるのだった。


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